税務調査で言ってはいけない「否認される理由と根拠」

節税はしたい、でも税務署とは揉めたくない?

誰だって、税金の支払いは少ないほうがいいし、かと言って税務調査で税務署と揉めるのはイヤでしょう。

ただ、税務署と揉めない節税対策って、大抵は、元々政策的な配慮から国が推奨していたり、実は単に税金の支払期限を延期したに過ぎないので黙認されているだけのものだったりします。

それに「税務署がうるさいかも」といって、最初から”弱気で引き気味”の申告をしておけば、そりゃ税務調査で何も揉めないです。

税務戦略というのは、「利害の対立する税務署との対立の中でどれだけ多くの”陣地”を取るのか」ということでしょう。

より多くの陣地を取るためには、意見が対立するところで、”踏み込んだ”申告をしておき、それを税務調査でできるだけ死守するということではないかと。

つまり、税務戦略で成果をあげようとすれば、まず間違いなく税務署と揉めるんですよ。

ですから、多少の税務調査での否認リスクは取ってでもより多くの税務戦略での成果を上げたいと言うのではあれば、税務署との対立は覚悟しないといけません。

そこで、今回は、税務調査で税務署と対立した際の「なぜそうしたのか?」「その計算根拠は?」というやり取りの中で、「これは言ってはダメ」というものをまとめてみることにします。

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税務署が納得するための3要素

税務署を納得させるためには、「なぜそうしたのか?」「なぜその金額なのか?」「本当に実行されているのか?」について合理的な説明が必要です。

「なぜそうしたのか?」については、その経済行為が営利を追求する法人として必要であるという合理的な理由が求められます。

「なぜその金額なのか?」については、特にお手盛りになりがちな関係会社間の取引などの金額が、第三者間の取引価格に比べて妥当であることをデータで証明する必要があります。

「本当に実行されているのか?」については、それらが架空のものではなく、説明通りの理由で実際に行われていることを証明する成果物や証拠書類の整備が必要になるのです。

これらがきちんと準備されていれば、税務調査で税務署が会社の税務処理に疑問を呈してきても、まず否認されることはないでしょう。

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税務署が納得しない3つの理由と根拠

節税のため

実際には、「こうすれば税負担が軽減できる」という期待があっての行為だとしても、税務署から「なぜそうしたのか?」と聞かれて素直に「節税のためです」というのは禁句です。

節税以外に合理的な理由がない場合、純経済人の行為として不自然・不合理なものとして否認される可能性が高いといえます。

もちろん、国が政策的な配慮から推奨したり、処理を認めた節税対策であれば良いですが、そのときには、税務署が「なぜそうしたのか?」などと聞いてくることはないでしょう。

税負担軽減の思惑があったとしても、税務署を納得させるには、その経済行為が「節税以外」に会社運営上必要なことであるという理由を丁寧に積み上げていく必要があるのです。

利益調整のため

利益を減らすために利益調整をしたというのは結果的に節税のためなので、当然ダメなのですが、「金融機関対策として利益の調整をするため」という理由も税務調査ではまず合理的なものとはされません。

「無担保無保証での資金調達の途を増やすために会社を新たに設立した」というのであれば合理的な理由とされますが、「銀行対策で利益を調整するために新たに会社を設立した」というのでは全く意味が異なります。

もちろん、銀行にもそんな説明はご法度です。

資金繰りの都合

実際に資金繰りの都合により、経済行為に対する支払いが遅れていたり、未払金として計上がされていることに問題はないです。

しかし、関係会社間の取引価額についてその計算根拠が「資金繰りの都合により」算出がされたというのはNGです。

例えば、A社所有の機械装置をB社に賃貸をする場合、その金額を「A社の借入金返済に合わせた賃貸料にする」というのは一見合理的なようで税務上は合理的とはされません。

実際には、資金繰りを考慮した上で金額が定められるにしても、その賃貸料が第三者間の取引と比較して妥当な水準であるとの説明が必要になるのです。

それでも否認リスクは0にはならない

税務署が納得する理由とは、「営利を追求すべき企業が取るべき合理的なもの」ということ。

税務上の否認リスクを少なくするには、その「ビジネスリーズン」を一つよりも二つ、二つより三つと丁寧に積み上げた説明をしなくてはなりません。

しかし、それだけやっても時には否認をされるのが税務の世界。

効果はあるとわかっていても、一定の比率で不具合が出る「ワクチン接種」のようなものかと。

最高裁「組織再編税制を濫用」~ヤフー事件を振り返る~|日税ジャーナル

なので、税務上”突っ込んだ”処理をするのであれば、それがどのくらいの確率の「否認リスク」をはらんでおり、その確率から導かれる「期待値」と最悪否認されたときの「ダウンサイドリスク」を認識した上で税務署と対峙するのか自らが決断をせねばなりません。

税務も投資と同様、リスクとリターンが見合う側面もあるのです。

そんな不安定でどうなるかわからないことはしたくない?

ならば「知っていれば誰でもできる節税策」だけやってあとは素直に税金を支払ったほうが良いでしょう。

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