株式などの有価証券の取引は消費税は非課税|だけど思わぬ形で消費税額増加も

資産の譲渡等については消費税は課税対象だが

消費税の課税対象となる取引は「国内において」「事業者が事業として」「対価を得て行う」「資産の譲渡等」とされています。

しかし、価値の減らない土地の譲渡については「消費」という概念に馴染まないため、消費税の課税対象ではあるものの「非課税取引」とされています。

では、株式などの有価証券を譲渡した場合はどうなるのでしょうか

そこで、今回は、有価証券を譲渡した場合の消費税の課税関係についてまとめてみることにします。

スポンサードリンク

有価証券の譲渡は非課税取引

有価証券についても、「国内において」「事業者が事業として」「対価を得て行う」「資産の譲渡等」に該当すれば、本来消費税の課税対象となります。

しかし、土地の譲渡と同様、株式や債券、投資信託など有価証券(ゴルフ会員権を除く)の譲渡については、消費という概念に馴染まず、消費税上、非課税取引とされています。

ですから、これらの有価証券を譲渡したとしても消費税はかかりません

課税売上割合算入の特例

しかし、有価証券の譲渡をした場合、消費税の納税額が増えることもあるのです。

さて、消費税の納税額については、その事業者が売上等に伴い預かった消費税額から仕入れ等に伴って支払った消費税額(課税仕入れに係る消費税額)を差し引いた金額を納税することになります。

しかし、差し引くことの出来る消費税額は、課税仕入れ係る消費税額の全てではありません。

その仕入れ等が課税売上高に対応するのもののみとされているのです。

そのため、賃貸用マンションを取得した場合に、建物に対する多額の消費税額を支払っていたとしても、それは居住用の家賃という非課税売上を上げるために支払ったものであるため、原則として賃貸用マンション取得に伴い支払った消費税額は控除が出来ず、事業者の”自腹”となります。

では、課税売上にも非課税売上にも共通して必要であった仕入れ等はどうでしょう。

その場合には、その支払った消費税額に「課税売上割合」を掛けた金額が控除出来る消費税額(仕入控除税額)となるのです。

この課税売上割合は次の算式で計算がされます。

 課税売上割合=課税売上高/(課税売上高+非課税売上高)

このため、非課税売上の割合が大きくなると、課税売上と非課税売上に共通対応した消費税額の控除額も小さくなるのです。

では、有価証券を譲渡した場合、課税売上割合はどうなるのでしょう。

有価証券の「譲渡対価の5%」が非課税売上として計算がされるのです。

「有価証券の売却益が非課税売上、売却損は非課税仕入」というわけではありません。

1000万円で購入した株式を1000万円で売っても何ら損得はありませんが、50万円(1000万円×5%)だけ非課税売上として課税売上割合の計算上加算されるということ。

一度きりならまだ良いですが、短期で有価証券の売買を繰り返している場合、思わぬ形で課税売上割合が低くなっていることもあるでしょう。

(ただし、合資会社、合名会社、合同会社、協同組合等の持分は譲渡対価全額が非課税売上とされます)

なぜそうなのか?

私もわかりません。そういうルールだと思ってください。

なお、課税期間の課税売上高が5億円以下である事業者については、原則、この「課税売上割合が95%以上であれば100%とみなす」というルールがあります。

結果的に、課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者は多少非課税売上高があったとしても、仕入れ等に伴い支払った消費税額は全額控除されるということ。

逆に言うと、課税期間の課税売上高が5億円超の事業者であったり、課税売上割合が95%未満となる会社は、有価証券の譲渡により消費税の納税額が増えることが予想されます。

特に高額の有価証券の売買を繰り返しているときには、思わぬ形で消費税の納税額が増えることがある。

「有価証券の取引は非課税」と思いこんでいると「追加で行うべき」この経理処理を忘れがちなので、税務調査で指摘されることのないようきちんと処理をしておきたいものです。

セミナー音源No.14:消費税の基本と節税そして大改正

インフィードモバイル

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を