生命保険など全額損金の金融商品が本当に節税になるのは?

全額損金だけでは法人税の節税にはならない

「支出時にその全額が損金になる」といわれると、その分、税負担が減るので節税になると思う人も多いのでしょう。

しかし、現実には「支出時に損金になったものは、入金時に益金になり、支出時に損金になっていないものは入金時には益金にならない」のですから、両者の税負担は同じであり、全額損金には法人税の節税効果はありません。

節税効果などない以上、「節税商品」と言われるもの支出した金額より戻ってくるお金のほうが少なければ、確実に損をする。

仮に節税効果があるとすれば、その損をした分だけ税金が多少安くなるというだけでしょう。

しかし、「節税商品」によって戻ってくるお金が支出したお金よりも少なくなる金額以上に税負担が軽減されるケースもあるのです。

そこで今回は、「節税商品」によって本当に税負担が軽減される理由についてまとめておくことにします。

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節税商品によって当初に多額の損失が生じるが

節税商品としてよく用いられるのは、生命保険や航空機のオペレーティングリースというものです。

生命保険は、年齢が上がるごとに死亡リスクが高くなる分、同じ保障額であっても、保険料は年々上がるはずであるところ、販売政策上、保障期間内の保険料を一定とする「平準払」とされているものがほとんどです。

要するに、若い頃に必要額以上の保険料を前払いしておき、年をとってから不足する保険料にその前払い分を充当するのですが、「中途解約をした場合には、その前払いした保険料の一部が返ってくる」というというのが全額損金でありながら解約返戻金が生じるカラクリ。

それが、一定の条件を満たす生命保険契約であれば、前払い分については資産計上をすべきところを”割り切り”として、保険料の支出時に全額損金算入を認められているため、契約当初は損金が生じる半面、解約返戻金を受け取ったときにはその分の益金が生じるのです。

また、航空機のオペレーティングリースとは、航空機を取得し航空会社にリースをしてリース料を受け取るということです。

航空機の減価償却は定率法により導入当初に多額の減価償却費が生じることで、受取リース料を上回る分だけ、当初に多額の損失が生じますが、減価償却費の減るリース終了間際の期間ないし航空機の売却時には多額の利益が生じるのです。

要するに、全額損金算入の生命保険についても航空機のオペレーティングリースについても、契約当初に多額の損失が生じるがあとで利益が生じるのがポイント。

それによって、税負担が減少するものの、いずれお金が帰ってくることが期待できるというものですが、実際には、そのお金が帰ってくる時に税負担が増えるのです。

自社株評価を引き下げて事業承継コストを軽減

このように、「購入から解約ないし売却」というトータルの期間で見ると、これらの節税商品には税負担を軽減するという効果はないことがわかります。

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ですが、「導入当初に多額の損失が生じる」ということが、節税効果を生じることもあるのです。

それが「自社株評価引き下げによる事業承継コスト負担の軽減」です

親から子供に事業を承継するというのは、その会社の株式が親から子供に移転をすることを意味します。

これが先代経営者の死亡時に行われれば相続、生前に行われれば贈与または譲渡によることになります。

これらには、それぞれ、相続税、贈与税、譲渡所得税がかかりますが、それらの税負担は、その会社の株式の評価額が高いほど高くなります。

つまり、この事業承継コストを軽減するためには、自社株の評価額を低くすることが必要なのです。

では、この自社株はどのように評価をされるのでしょうか?

それは「財産評価基本通達」というもので定められていますが、非上場の株式については、原則として、会社を解散して資産を換金し負債の支払いをした残りである「会社の清算価値」と「会社の業績」により評価がされます。

そして、その対象となるのは、「会社の清算価値」については、自社株の移転が行われた直前期の末日、「会社の業績」については、その移転が行われた直前3事業年度となります。

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これらの対象となる期間だけ、一時的に会社の業績が悪化し、会社の清算価値が少なくなれば、その時点での自社株式の評価額は低くなることになります。

もちろん、相続については、いつ発生するのかはわかりませんが、贈与や譲渡であればその時点は自らが決めることができるでしょう。

ですから、自社株の贈与や譲渡のタイミングで節税商品により一時的に損失を生じさせることで、事業承継コストを引き下げることは可能になる。

つまり、これらの節税商品の本質は、それ自体に法人税の負担を軽減する効果はなく、「合法的に損益計算を歪めることができる」というものなのです。

節税のつもりが実はそれ以上に金を失うということのないよう、その節税商品の本質はきちんと理解した上で活用したいものですね。

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