社長の家族しかいない会社の社員旅行などは福利厚生費として損金で落とせるの?

家族経営の会社の福利厚生費

福利厚生費とは、会社が役員や従業員の健康増進や慰労、労働環境の整備などのために支出する費用のこと。

これらの福利厚生費は、役員や従業員が円滑に活動をするためのコストであり、売上高獲得のための必要経費とされるのが原則です。

一方で、役員や従業員は、その福利厚生により、給与以外の形で経済的な利益(フリンジ・ベネフィット)を受けたことになり、その分は会社からの給与としての課税がなされるものの、一定の範囲内ではわざわざ課税されないことになっています。

では、家族経営の会社では福利厚生費はどのような取り扱いを受けるのでしょうか?

そこで、今回は、家族しかいない会社での福利厚生が、給与とされる場合、されない場合についてまとめてみることにします。

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福利厚生費が給与課税されない場合

福利厚生費には次のようなものが考えられます。

・社会保険料の会社負担などの法定福利費

・住宅手当・家賃補助

・通勤交通費

・冠婚葬祭の慶弔費

・健康診断費用

・社員旅行費用

・レクリエーション活動費用

・永年勤続の記念品

・食事代

これらの福利厚生費が役員や従業員に対する給与として課税がされないためには、次の3つの要件をともに満たすことが必要です。

1.全員に公平に利用の機会が与えられている

福利厚生の名目でなされたことであっても、利用できるのが特定の者のみである場合には、その個人に対する給与として課税がされます。

例えば、社員旅行だとしても、それが特定の成績優秀者のみが参加できるといったものは、形を変えたボーナスとして給与とされます。

また、社長や役員のみが利用できるリゾート会員権などを会社が福利厚生目的として購入をしたとしても、その金額は、利用が可能とされた者に対する給与として課税がなされます。

社長しか使っていない施設の取得費用や利用料金を会社が負担していたとなると、その費用は、本来社長が負担すべきものを会社が負担したものであり、その分、社長は臨時の経済的利益(賞与)の支給されたものとなります。

そうなると、社長個人に対する源泉所得税に加えて、法人では臨時給与として損金不算入とすることで法人税も、さらにその費用についての消費税まで追徴課税ができるので、税務署はかなりしつこくその利用状況を調べてくるのです。

税務調査で否認されたくなければ、利用規程を作って、とにかく従業員にも利用してもらうようにしましょう。

なお、得意先等と一緒に一度でも利用をすれば、その利用料金等は、福利厚生費ではなく、交際費となります。

2.経済的利益が社会通念上認められた範囲である

全員に公平に利用の機会が与えられたものであったとしても、その金額が社会通念上認められた範囲を超えたものは、その超えた部分について、その利用のメリットを受けた役員や従業員に対する給与となります。

その社会通念上認められた金額というのは、まさに「常識の範囲内」ということであり、明確な基準がないものも多いです。

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一方で、通勤交通費や食事代、社員旅行費用、借り上げ社宅の負担分などについては、給与としないで良いとされる範囲が明示されています。

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3.金銭での給付を選択できないこと

福利厚生のための経済的な利益の供与(フリンジ・ベネフィット)が給与課税されないためには、「金銭での給付が選択できないこと」も必要です。

たとえば、全社員に参加の機会が与えられた社員旅行であっても、都合による不参加者に対して、代わりに金銭を支給する場合、その金銭を受けた社員はもちろん、社員旅行に参加した社員に対しても旅行代金相当額の給与の支給があったものとされてしまいます。

実際に金銭での支給を受けたかどうかではなく「金銭での支給という選択肢がある時点」でフリンジ・ベネフィットは給与課税の対象となるのです。

家族のみしかいない会社の福利厚生費

では、金額も社会通念の範囲内で、全社員に公平に利用の機会が提供され、金銭での支給という選択肢がない、社長一人の会社やその家族のみの会社の福利厚生費は、どのような取り扱いをされるのでしょう?

結論から言えば、家族のみの会社に対する福利厚生費が給与とされないのは極めて限定的だと言えます。

法定福利費や社会通念上認められた通勤交通費、借り上げ社宅家賃については、社長しかいない会社でも、経済的利益が給与として課税されることはありません。

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しかし、家族以外の社員がいない会社の場合、慶弔費や社員旅行代、人間ドックの費用などについては、家計で負担すべきものとされ、会社が負担をした場合には、それらの人に対する給与とされます。

「役員のみが対象でダメだが従業員も対象であれば給与課税されない」というと、じゃあ、奥様を従業員とすることで役員だけではなく従業員も対象としているので特定の者に対するものではないと考える方もいるようですが、そのような主張はまず認められないです。

役員と従業員と身分を異なるものとしたところで「社長とその家族」という特定の者しか受けていないんですから。

たまたま従業員が0になったのならば余地はある

ここからは、私の個人的な考えですが、元々家族以外の従業員もいた時期から実施されていた福利厚生が、その者の退職により、一時的に家族しかいない状態になったとしても、すぐに給与課税がされることはないのではないかと。

例えば、家族だけでなく家族以外の従業員のために設置されていたウォーターサーバー代などです。

あるいは、家族以外の従業員がいる頃から定期的に実施されていた社員旅行が、たまたま家族以外の従業員が退職して、結果的に家族しかいない時にも実施されたのであれば、その支出について給与とされない余地があるのではないかと考えます。というか私ならそう説明します。

ただ、海外旅行は、誤って消費税の仕入税額控除をしていないか重点的に調査をする項目なので、「家族のみ海外社員旅行」は、ほぼ間違いなく税務調査では見られるものだと思っておいたほうがいいですよ。

あとは、税務調査で否認されるのかは、金額の大小と他の指摘項目との兼ね合い次第でしょうね。

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