相続対策を考える上での優先順位|いきなり節税を考えるのは愚の骨頂
目次
基礎控除縮減の影響が大きいのはやはり資産家
相続税の基礎控除が縮減されることで、相続税の対象者が”倍増”し「1億総相続税時代が来る」などと経済誌は煽りました。
しかし、現実に相続税の納税義務があるのは、亡くなった方100人に対して8人程度。改正前は100人に対して4人程度でしたので、”倍増”はウソではないのですが、依然として相続税は92%の人には無縁の特殊な税金なのです。
むしろ、元々課税遺産総額の大きな方にとって、基礎控除縮減は、課税遺産総額を押し上げるだけでなく、累進課税のより高い税率が適用されることを意味するので、そもそも税負担がなかったものの新たに相続税の負担が生じたような人よりもずっと影響は大きいことになります。
そのため、より相続税の負担を軽減する節税対策に目が向くことになると思うのですが、実際にはそれよりも先にきっちりと確定させるべきものがあります。
そこで、今回は、相続対策を考える上での優先順位についてまとめてみようと思います。
相続対策での優先順位
相続対策を検討する上では次の優先順位で検討をする必要があります。
1.円満な遺産分割の実現
残された遺産や債務について、誰が何を引き継ぐのかという色分けをします。
そのためには、事前に遺言書の作成や侵害している遺留分があればその放棄をしてもらうか、なにか別の方策でバランスを取るかなどの方策を被相続人が元気なうちに手立てを打っておきます。
2.納税資金の確保
円満な遺産分割をベースにして計算される相続税額について、その納税が手持ちの金銭で可能なのかを考えます。
それが難しい場合、金融機関からの融資や相続税の延納での資金収支を検討し返済の実現可能性を吟味します。
それでも難しい場合、相続財産に含まれる不動産などについて売却を検討し、それに合わせて売却用の不動産を共有で相続することを検討するなど遺産分割案の調整を行います。
3.相続税負担の軽減
納税資金確保の道も見えてきた段階で、資金的にも時間的に余裕もあれば、相続税の税負担を軽減するための節税対策に着手します。
時間があれば、生前贈与や事業承継税制の活用、評価額と時価に乖離のある不動産購入などの検討します。
全体最適を目指すグランドデザインを描く
しかし、現実には、遺産分割もあやふやで足りない納税資金を確保しようと相続税の節税対策から取り組もうとするケースが目立ちます。
相続においては、遺産分割が幹であり、納税資金確保が枝、節税は葉っぱに過ぎないのに。
遺産分割があやふやな中で一人の相続人が勝手に描いた節税対策など、他の相続人からの「そんなの知らん」一言でまるでオセロのようにひっくり返されてしまうのです。
その結果、10年以上に及ぶような血みどろな「遺産争族」になってしまっては、まさに本末転倒でしょう。
遺産相続は、遺産分割、納税資金、相続税だけでなく法人税、所得税、そして承継した会社の経営にまで大きな影響を及ぼします。
しかし、現実には、中途半端に知識をある相続人が自分勝手な思い込みや聞きかじりの知識で節税対策から取り組むことが多く、そういうケースこそがトラブルになる確率が最も高いのです。
ですから、相続対策については、専門家による全体像を見据えた遺産相続のグランドデザインを描くことからはじめないといけないのです。
それをしないで、いきなり相続税の節税に勤しむのは、検査もしないで目の前の痛みを取り除く手術をしようとしているようなもの。
部分的につまみ食いで依頼されたとしても、それが他にどんな影響を与えるのかまでは責任は持てませんよ。
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