補助金で買った資産に税額控除は適用できるの?|国庫補助金の圧縮記帳と税額控除

事業再構築補助金で設備投資をしたら

事業再構築補助金やものづくり補助金など、国から補助金を受け取り設備投資をした場合には、圧縮記帳や税額控除と言った税制上の優遇措置を受けることができます。

では、この圧縮記帳と税額控除をどちらも受けることは可能なのでしょうか?

そこで、今回は、補助金をもらって設備投資をした場合の圧縮記帳と税額控除の適用関係についてまとめてみようと思います。

圧縮記帳とは実質的に割増の償却と同じ

補助金をもらって、設備投資をした場合などでは、補助金については受け取った時点で全額が益金になる一方、その補助金で取得をした設備については、減価償却により法定耐用年数に渡って損金に算入がされます。

そうなると、仮に補助金を設備投資にすべて充当した場合、お金はまったくないのに、補助金と減価償却費の差額だけ利益が増えて税負担が生じてしまいます。

そこで、国庫補助金等一定の補助金により固定資産を取得した場合には、補助金をもらった時点で一気に課税が生じないよう、補助金のうち固定資産の取得に使った部分の金額については固定資産の金額と相殺して損金に算入することが認められています。

相殺した分だけ、固定資産の残存価額は減り、翌期以降の減価償却費が減るのですから、要するに国庫補助金の圧縮記帳とは、補助金額までの割増での減価償却を認めるのと同じことだといえます。

例えば、1,000万円のものづくり補助金を受け取り、そのお金を2,500万円の機械装置を取得に充てたとして、初年度の普通償却による減価償却費が300万円である場合、

補助金収入1,000万円ー減価償却費300万円=課税所得700万円

となり、その約30%の法人税210万円が課せられるとすれば、補助金はすべて機械装置の取得に使っているので、手許にお金がないのに、法人税の負担だけが生じることになります。

それが圧縮記帳が使えると

補助金収入1,000万円ー減価償却費300万円ー建物と相殺700万円=課税所得0円

となるので、補助金を受け取った事業年度での法人税の課税は回避されます。

ただし、圧縮記帳により、補助金と建物の金額を相殺した分だけ、建物の取得費が減るため、翌期以降は、減価償却費が減るので、圧縮記帳をしなかったときよりも税負担が増えます。

ですから、最終的には、固定資産取得のために支出したお金が損金になるだけで、特に税負担が軽減されるわけではありません。

国庫補助金を受け取ったとき|タックスアンサー

中小企業投資促進税制による税額控除は節税効果あり

中小企業が一定の要件を満たす設備投資をした場合、通常の減価償却に加えた割増での減価償却(特別償却)かその取得価額に一定割合を掛けた金額だけ法人税が減税(税額控除)されるかのどちらかを選択できます。

例えば、1,000万円の機械装置を購入した場合には、1000万円×7%=70万円だけ法人税額から税額控除がされるということです。(ただし、税額控除は法人税額の20%が上限となります)

この税額控除を選択して法人税額の減税を受けられたとしても、通常通りの減価償却は可能です。

圧縮記帳や特別償却は、「期間を分けて食べるケーキを、今日は誕生日だからいつもより余計に食べてもいい」ということであり、お金も払わずに経費が勝手に湧いてくるのではないので節税効果はありません。

それに対して、この税額控除は、「ケーキは通常通り食べてもいいが、誕生日なのでプレゼントで現金をもらう」ということなので、実際に税負担がトータルで減少するという節税効果を享受することができます。

中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|タックスアンサー

圧縮記帳と税額控除の併用の可否

圧縮記帳については、「法人税法による圧縮記帳」と「租税特別措置法による圧縮記帳」の2つがあります。

法人税法上の圧縮記帳

・国庫補助金等で取得した固定資産等(法法42~44)
・保険金等で取得した固定資産等(法法47~49)
・交換により取得した資産(法法50)

租税特別措置法上の圧縮記帳

・収用等に伴い取得した代替資産(措法64、64の2)
・特定の資産の買換え等により取得した資産(措法65の7~65の9)

ざっくりというと、法人税法による圧縮記帳は、税制改正がされるまではその適用が可能な「恒久的」な措置であるのに対して、租税特別措置法による圧縮記帳は、適用期限が定められた「時限的」な措置だといえます。

原則として、同一の固定資産に対して、複数の租税特別措置法による特例を適用することはできません。

中小企業投資促進税制による税額控除も租税特別措置法による特例です。ですから、特定の資産の買換え等により取得した資産について、圧縮記帳と税額控除を重複して適用することはできません。

一方で、法人税法上による圧縮記帳と租税特別措置法による税額控除については重複して適用ができます。

ただし、それはあくまでも圧縮記帳を適用した場合には、その相殺後の取得費のみについて税額控除が適用できるということです。

ですから、1,000万円のものづくり補助金を受け取り、そのお金を2,500万円の機械装置を取得に充てたとして、先に圧縮記帳を適用したとすれば、1,500万円(2,500万円ー1,000万円)のみが税額控除の対象となる。

具体的には、1,500万円×7%=105万円の税額控除を重複して受けることができるということです。

補助金の交付が翌期となる場合の税額控除

一般的には、補助金の受給は固定資産の取得を待ってからなので、その間に決算を迎えてしまい、補助金の受給が固定資産取得の翌期以降にズレ込むこともあります。

その場合には、固定資産を取得した事業年度で、取得価額2,500万円から補助金の交付予定額1,000万円を差し引いた額に対して7%を乗じた額について税額控除の適用を受けることができます。

その上で、翌期に補助金について圧縮記帳を行えばよいのです。

節税狙いなら税額控除を優先し圧縮記帳しないことも

なお、圧縮効果には節税効果がないのに対して、税額控除にはリアルな節税効果があるため、真の節税効果を狙うのであれば、単なる減価償却のスケジュールの問題にすぎない圧縮記帳は捨てて、税額控除を優先することも考えられます。

圧縮記帳をしないのであれば、その固定資産の取得価額全体に7%を掛けた金額だけ税額控除を受けることができます。

ですから、資金繰りに余裕があり、あえて補助金の圧縮記帳などしなくてもお金が回るというのであれば、リアルに節税効果のある税額控除を優先するため、圧縮記帳はしないということが、トータルでの手許資金を増やすことにもなるのです。

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