タワマン節税封じ込めの評価通達改正はすべてマンションに適用されるわけではない
目次
タワマン節税封じの対象外となるケースとは
これまで、相続税の課税価格を圧縮する方策として、市場価格よりも低く評価されることの多い「タワマン」を相続開始前に取得し、相続開始後に売却をするという「タワマン節税」が広く行われていました。
都心のタワーマンションでは、階数が上がるほど市場価格が上がるのに、それが土地の路線価に反映されない点や多数の住居がある場合には土地の共有持分が小さくなることなどにより、市場価格に比べて「極端に」その相続税評価額が低くなることも多く、いよいよ、その評価の乖離についてメスが入ったのです。
しかし、この「区分所有マンションの評価改正」はすべての高層建築に適用されるわけではありません。
そこで、今回は、この「区分所有マンション評価改正」の対象外となるケースについてまとめてみようと思います。
区分所有マンション評価の改正
現行のマンション1室の評価方法
現行の評価方法では、建物については、固定資産税評価額を、土地(敷地利用権)については、土地全体の評価額に共有持分割合を掛けた金額により評価をしています。
建物|固定資産税評価額×1.0
(貸家については×0.7)
土地|土地全体の路線価による評価額×共有持分割合
(貸家については、「1-(借地権割合×借家権割合)」を乗ずる)
現行法の問題点と改正のポイント
建物の相続税評価額は、これから同じもの新たに建設する時に要するコストである再建築価格をベースに算定されますが、部屋の階数などは考慮できないことから、高層階ほど相続税評価額が市場価格に比べて低くなるケースがあります。
土地の相続税評価額は、土地全体の評価額に共有持分を乗じて評価しますが、総戸数が多いタワマンの場合、共有持分が小さくなることから、元の土地の価格が高い都心部で総戸数が多いほど相続税評価額が市場価格に比べて低くなりがちです。
そこで、令和6年1月1日以降の相続・贈与については、これまでの相続税の評価方法では考慮のできなかった「築年数」、「総階数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づき、「評価かい離率」というものを算出して相続税評価額を補正することとされたのです。
この4項目から市場価格の理論値と相続税評価額の間の「評価かい離率」を算出し、現行の相続税評価額にこの「評価かい離率」(最低評価水準として「0.6」)を乗じることでそのかい離を埋めようとしているわけです。
これにより、タワマンなどのマンションについても、相続税評価額が最低でも市場価格の6割程度となり、戸建住宅と同水準となることで、公平を図ることとなったのです。
タワマン規制の対象外となる物件
国税庁は、10月6日に公表されたマンションの新たな評価方法を定めた「居住用の区分所有財産の評価について」の通達を、さらに10月13日には、「『居住用の区分所有財産の評価について』(法令解釈通達)の趣旨について(情報)」を公表しました。
(1)課税時期において区分建物の登記がされていないもの
この通達の対象は「居住用の区分所有財産の評価」とされており、「区分所有補正率」の対象となる「一室の区分所有権等」とは、「一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室に係る区分所有権及び敷地利用権」とされています。
この点から(1)(2)(3)は、区分所有補正率の対象とならないことがわかります。
まず『一棟の区分所有建物』とは、相続や贈与といった課税時期において、区分建物の登記がされたもののことをいうので、相続や贈与の時点で、区分建物の登記がされていないものは該当しません。
(2)一棟所有の「賃貸」マンション
同様に『一棟の区分所有建物』の定義から、一棟丸々所有する「賃貸」マンションの場合には、この区分所有補正率を適用する対象には該当しません。
ただし、マンション一棟をひとりで所有していたとしても、その各部屋を区分所有している場合は、その部屋ごとに「区分所有補正率」を適用して評価額を算定し、各部屋の評価額を合算したものが一棟の評価額となります。
これは、一室ごとに切り売りできるのであれば、たとえ一棟を全部所有していたとしても、区分所有補正率を適用する対象となるということです。つまり、一般的な「分譲マンション」は該当するということです。
なお、分譲マンションであれば、そのマンション一室を区分所有者自身や親族が居住しているほか、第三者に賃貸している場合も区分所有補正率の適用対象となります。
また、課税時期において空き部屋であっても、「居住用」については適用対象となります。
(3)事業用のテナント
「『居住用』の区分所有財産の評価」の対象は、居住用のいわゆる分譲マンションであることから、事業用の物件については、該当しません。
なお、対象となる「居住の用に供する専有部分」とは、一室の専有部分について構造上、主として居住の用途に供することができるものをいい、原則、登記簿上の種類に「居宅」を含むものが該当します。
ですから、構造上、主として居住の用途に供することができるものであれば、仮に課税時期において事務所として使用している場合でも、「居住の用」に供するものに該当します。
(4)低層の集合住宅
上記の「居住用の区分所有財産」には該当するものの下記の(4)(5)は、区分所有補正率の対象から除外されています。
地階を除く階数が2以下の住宅については、この区分所有補正率を適用する対象には該当しません。
(5)二世帯住宅
同様に、居住用の専有部分一室の数が3以下で全て当該区分所有者又はその親族が居住している住宅については、区分所有補正率を適用する対象には該当しません。
評価通達の総則6項が適用される余地も
相続財産の評価については、財産評価基本通達により評価することを認めるものの、通達による評価が著しく不適当と認められる場合は、評価通達の総則6項(国税庁長官指示による鑑定評価額等での評価)が適用されます。
タワマンなどの分譲マンションについて、市場価格の最低6割で評価がされるとしても、まだ市場価格との乖離はあることから、この「タワマン規制」がされた後も、相続開始直前に借入金で取得したタワマンを相続開始後に売却をするという「あざとい節税対策」が採られることもあるでしょう。
これらのあざとい節税対策の封じ込めとして、「タワマン規制」とは別問題で、その評価が著しく不適当と認められる場合には、従来どおり総則6項が適用される余地はあるということです。
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