さよなら一人社長!法人から個人事業主へ「個人成り」という選択

社会保険料負担の増加で法人化の節税メリットは吹き飛んだ

事業が軌道に乗ってきたら法人化するというのが節税のセオリーかのように言われてきました。

しかし、法人・個人負担を含めた社会保険料が給与の約30%にも上昇したことで、税金と社会保険料を合わせた負担を考えると、その法人成りの”損益分岐点”となる所得は上昇ないし、どうやっても法人の方が負担が大きいということのほうが多くなってきています。

もちろん、厚生年金には老後の給付について国民年金とは異なる側面もある上、今や社会保険加入していないと人材募集ができないという面もあって、税と社会保険を同列で合算するわけにはいかない部分もあるでしょう。

しかし、厚生年金は若年層ほど「払い損」の額が大きいことは事実であり、今後社会保険料がさらに上昇する可能性が高い中、自分ひとりの会社であれば、「得だと思って法人化してみたものの、わざわざ法人化するメリットが少ないのでは」と感じる人も多くなってくるのではないかと。

そこで、今回は、社長一人しかいない会社は、いっそのこと法人をやめて個人事業へ「個人成り」してはどうよという話をしてみようと思います。

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法人をやめて個人事業にするメリット

節税のために個人事業を法人化するというメリットで語られるのは、

・法人は一律課税、個人は累進課税+個人事業税なので所得水準が高ければ節税に

・法人であれば、給与所得控除という概算経費計上も可能

・原則法人設立2期間は、再度消費税納税義務が免除

ということでしょう。

これは決して間違いではないのですが、いくら社会保険料は支払額が所得控除や損金に算入されるにしても、法人個人を通じて約30%もの負担になるのであれば、税金と社会保険料を合わせると、法人よりも個人事業化するほうが負担が軽減されるケースも出てきます。

さらに、消費税の納税義務免除については、法人で納税義務が生じる課税売上高になっていたとしても、「個人成り」をすることで再度、原則2年間は消費税の納税義務が免除されるのです。

また、法人は、税務申告が個人事業よりも煩雑で、税務調査の頻度も個人事業主に比べると高いです。

その分、税理士などプロフェッショナルへの依頼が不可欠となりますが、個人事業なら、少し頑張れば、自身で確定申告ができるということもあります。

その上、株式会社の場合、役員変更(重任)登記が必要であったりと面倒なことも多いものです。

それであれば、いっそのこと「法人での活動を辞めて個人事業主に戻る」という選択もあるのではないかと。

フリーランスなんか税金と社会保険以外、どっちだって活動するには同じようなものですから。

さっさと会社をやめて、それまでの期間に応じた役員退職金を支給し、個人で活動を継続してはいかがでしょう。

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法人をやめて個人事業主となる手続き

法人での事業活動をやめる場合、資産を換金し負債の弁済をした残りである「残余財産」を株主に分配する「解散」という手続きをすることが原則です。

しかし、社長一人の会社で、株主構成も100%社長である場合、わざわざ、コストも手間も掛かる解散をすることのほうが稀です。

一般的には、法人については、「休眠届」を税務署などに提出するだけでそのまま放置ということのほうが多いでしょう。

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その上で、一人で事業をするのであれば、新たに個人事業を開始するための「個人事業開始届出書」「青色申告承認申請書」を税務署に提出することになります。

どうしても法人じゃないといけない理由は?

法人化する理由の一つに、「個人事業よりも法人化した方が社会的な信用力がある」とよく言われます。

しかし、実際に事業を行っている人ならばわかると思いますが、そんなことはまずありません。

金融機関から融資を受けるにしても、法人化することで個人事業よりも高い評価を得るなどということはないです。

では、どうしても法人ではないといけないケースはどんな場合でしょうか?

多いのは、取引先の都合です。公共機関の入札や大手企業との取引口座開設には、法人でないといけないというケースがあります。

特に、最近は、一人親方への発注が「偽装請負ではないか」と言われたり、税務署が「外注ではなく給与の支払いである」として源泉所得税と消費税の追徴課税をするのを避けるため、大手企業を中心に得意先が取引の条件として一人親方であっても法人化することを求めて来ることが多いのです。

そのようなケースであれば、法人であることはやむを得ない。

ですが、そうでない場合、本当に、自分の事業が法人でないとできないものなのか、実質的にフリーランスなのに「代表取締役兼CEO」なんて名刺欲しさに法人化しているのではないのか、冷静な見極めが必要ではないでしょうか。

まあ、法人を活用して社会保険料負担の軽減を狙うなら、役員報酬を低くコントロールしたり、法人と個人事業をうまく並列させるストーリーが大事ということなんですがね。

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