売上除外した金を使ってしまった社長の末路
売上除外と架空経費計上はやってはいけない
税務の世界には、どこまでがOKでどこまでからダメというのがわかりにくいグレーゾーンがあります。
そのため、税務署側、納税者側とも100%自説を押し通すことができず、税務署から修正を求められた事項について、どこまでを認めてどこからは認めないという”落としどころ”を探すことになります。
しかし、売上除外や架空経費の計上にはそのような交渉の余地などありません。
では、その除外した売上金を個人的に使ってしまった社長はどうなるのか?
会社が除外した売上を上乗せした所得で修正申告をすればよいというわけじゃないよという話しをしてみます。
うっかりミスではない売上除外は重加算税の対象に
本来計上すべき売り上げが計上されていない場合、他の帳簿には記載されているのに、たまたま数件伝票起票を忘れたというのではなく、恒常的に除外された売上金については、まず間違いなく仮装隠蔽されたものとして、重加算税の対象となります。
仮装隠蔽とされると、追加本税の他にその35%(期限内申告をしていた場合)の重加算税も負担しなくてはなりません。
さらに、本来の申告期限から追加本税を納付した期間まで年9.1%(平成28年中の場合。2ヶ月以内の部分は2.8%)の延滞税も負担しなくてはならないのです。
社長が使ったら社長に対する給与課税も
問題はそれだけではありません。その除外したお金をそのまま社長がポケットに入れて個人的なお小遣いにしてしまったとしましょう。
そうなると、そのお金は社長に対する経済的な利益の供与であり、給与とされます。
給与とされるのであれば、その使ってしまった金額を本来の役員報酬に上乗せした額の給与をもらったものとして個人の所得税と住民税の追徴課税がされるのです。
さらに、本来徴収すべき源泉徴収義務を果たしていなかったとして不納付加算税が会社に課されるということにもなります。
一方で、そのお金が個人の預金等として残っているのであれば、「一時的な貸付金であり、返済するので経済的な利益の供与には当たらない」と反論する余地もあります。
しかし、裁決でも会社からの貸付金ないし会社への貸付金の返済と主張したものの社長への賞与とされたものもあり、特に除外したお金を使ってしまい社長の手許にはお金がないという場合には賞与とされるのを覆すのはかなりハードルが高いと思います。
(会社が負担した経費のうち個人的な支出とみなされたものについては、頑張って貸付金とすることは可能ですが、売上除外をしていると税務署も強硬な姿勢で挑んできます。それだけ売上除外の罪は重いということです。)
収入を除外した資金を代表者が当該預金口座から払戻ししていたことが、当該代表者に対する賞与の支給とされた裁決例(平成14.3.20裁決)
なお、賞与についても仮装隠蔽とされると重加算税の対象となりますが、修正申告に応じることで、「もう勘弁して下さい」というレベルの論拠しかないですが、過少申告加算税で済まされる余地もあります。
貸付金とするかも含め、この辺りは、売上除外の事実は素直に認めて頭を下げながらも、なんとか譲歩を引き出す税務調査の”寝技”的対応が求められるところです。
社長への賞与なら法人と個人の往復ビンタに
除外した売上だけ益金は増えるものの、使った分を社長への給与とされるのであれば、その分だけ社長への給与という損金が増えるので、売上除外がバレても法人の所得は増えないのでは?と思われるかもしれません。
しかし、役員に対する給与は定時同額で支給されたもの以外は特別な場合を除き法人の損金にはならないとされています。
理由はなぜか?
それは全くわかりません。理不尽ですがそういうルールなのです。
そのため、除外した売上の金額だけ法人の所得も増加します。
つまり、この場合には、役員への給与とされた社長個人には所得税・住民税が追徴課税される上に、法人でも法人税等の追徴課税がされる、まさに”往復ビンタ”となるわけです。
除外したお金を個人的に使ってしまってスッカラカンのところに追徴課税とこれらのペナルティを支払うのですから、相当大変なことになるはずです。
なお、法人税等の追加本税については、きちんと売上計上していた時には、その時点で納税をしていたであろうものですが、それ以外の重加算税などのペナルティや個人の所得税・住民税の追徴課税はこの売上除外という行為をしたことではじめて発生する負担です。
それに、悪質な仮装隠蔽があればその後の税務調査の頻度も上がりますし、金額によっては起訴され刑事罰が課されることもあるのです。
法定調書や資料せん、他の法人への税務調査などを通じて税務署はあなたの会社の売上について目を光らせていますので、「売上除外は割にあわない」と肝に銘じておく必要があるでしょう。
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