Google広告(アドワーズ)の消費税処理変更|簡易課税とリバースチャージ方式そして税務調査への影響

ネット広告は運営法人ごとに消費税の課税方式が異なる

2019年には、テレビ広告費を超えると言われるほど伸びてきたネット広告。

そのうちYahooの広告費については消費税が上乗せされて請求されているのに、Google広告(旧アドワーズ)については、消費税が上乗せされずに請求されていると言う違いがありました。

しかし、2019年4月からGoogle広告が日本法人の業務となったことで、この消費税の取り扱いに大きな変化が起きたのです。中には大きな負担増になる事業者もあるはず。

そこで、今回は、「Google広告の日本法人化」による消費税への影響についてまとめておくことにします。

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3月までは消費税上乗せなし、4月からは消費税上乗せあり

まず、結論から言えば、2019年3月までに利用されたGoogle広告の広告費については、消費税は上乗せされていませんが、2019年4月以降利用された分については消費税が上乗せされます。

1クリック100円で出せていた広告が、消費税8%であれば108円に、消費税10%であれば110円になるということです。

ここだけみると、今回の「Google広告の日本法人化」により、広告出稿者としては負担増になるようにも思えます。

しかし、必ずしもそういうわけではありません。

というもの、消費税は「預かった消費税額ー支払った消費税額」を国に納税します。

4月以降は広告費に消費税が上乗せされGoogleに支払う金額は多くなりますが、同じ金額だけ消費税納税額の計算上控除される金額が大きくなり国への納税額が少なくなるので、「消費税の支払い金額合計」は変わらないことになるのです。

つまり、4月以降の「Google広告の日本法人化」により、支出のタイミングは早くなるものの、消費税の負担額に影響は「原則」ありません。

「原則」というのは「例外」があるということ。では、どんな場合に消費税の負担に影響があるのでしょうか。

簡易課税を選択している場合には消費税は負担増に

基準期間(通常前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の事業者については、預かった消費税額ー支払った消費税額の納税をする「原則課税方式」ではなく、「簡易課税方式」を選択することができます。

この簡易課税方式というのは、課税仕入れに係る消費税額のうち控除対象となる消費税額(仕入控除税額)をわざわざ集計することなく、業種ごとに定められた「みなし仕入率」というものを課税売上高に掛けた金額とすることで「簡易的に」計算することを認めるというもの。

つまり、実際に支払った消費税額に関係なく消費税の納税額が計算されるということです。

Googleに支払う消費税が増えたのに国に納税する消費税額の計算上考慮されないとなれば、簡易課税を選択している事業者については、4月以降実質的な負担増になるということでしょう。

リバースチャージ方式の適用者の実質負担は変わらない

Google広告のようなネット広告などインターネットを通じた役務提供については消費税の対象になるかの判断基準が「役務提供を行う者の住所」から「役務提供を受ける者の住所」へと2015年10月に変更されました。

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国境を超えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について

国境を超えた役務提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A

これにより、「国外事業者であるGoogleが提供するサービスであっても、日本国内の事業者が利用するのであれば、その支払が消費税の控除の対象になった」というものではありません。

Googleは消費税を上乗せして請求していないのに、利用者が消費税の控除などできないでしょう。

そうではなくて、「役務提供を受ける者の住所」が日本国内なので消費税の課税対象。だけど消費税の上乗せをしていないGoogleに消費税を支払わせるのは難しいので、代わりに利用者である日本法人が支払ってということです。

これを「リバースチャージ方式」といいます。

リバースチャージ方式とやらでGoogleAdWordsの消費税の取り扱いはどう変わるの?

「うちはGoogle広告を利用しているがそんな消費税など払ったことないぞ」

実は、このリバースチャージ方式は、全体の売上高に占める消費税の課税対象の割合である「課税売上割合」が95%以上の会社には当面適用が見送られています。(適用されても実質的な負担増は通常ありません)

消費税の課税対象とならない非課税売上とは、医療機関の診療報酬や居住用の家賃収入、土地の譲渡対価などであり、それらを受け取っていない事業者の課税売上割合は95%以上となることがほとんどなので結果的にリバースチャージ方式の適用を受けていないのでしょう。

逆に言えば、医療機関や不動産会社、あるいは多額の土地譲渡などで課税売上割合が95%未満となる事業者はこのリバースチャージ方式による消費税の追加納税をしなくてはならないということなのです。(簡易課税選択事業者や免税事業者は当面適用ありません)

しかし、Google広告が日本法人により提供されるとなれば、それはYahooの広告などと同様シンプルに「国内の取引」となります。

そのため、Googleからは消費税が上乗せされて請求された上で、消費税納税額の計算上、消費税の仕入税額控除をすることに変わるのです。

では、消費税の負担額にどんな影響があるのでしょう。

例えば、年間で1,000万円のGoogle広告の利用をしていた医療機関でその課税売上割合が10%、原則課税であったとします。消費税の負担額(税率は8%)は次のようになります。

3月までの利用

(1)Googleへの消費税の支払い

0円

(2)リバースチャージ方式での追加納税

1,000万円×8%×(1-0.1)=72万円

(3)合計

(1)+(2)=72万円

4月以降の利用

(1)Googleへの消費税の支払い

1,000万円×8%=80万円

(2)国への消費税納税額からの仕入税額控除

1,000万円×8%×10%=8万円

(3)差し引き負担

(1)ー(2)=72万円

つまり、今までリバースチャージ方式の適用を受けていた課税売上割合95%未満の事業者については、このGoogle広告の日本法人化によっても(ちゃんと申告していた事業者にとっては)消費税の負担は変わらないということです。

逆に言えば、リバースチャージ方式での申告を忘れていた事業者は負担増にはなります。今まで支払うべきものを支払っていなかったのですから当たり前ですが、意外と忘れていることも多いのではないでしょうか。

税務調査でGoogle広告の取り扱いに注目も

実は、税理士の中にも、これらのネット広告の税務上の取り扱いに不慣れな人も多く、私がセカンドオピニオンとして見た中でも、リバースチャージ方式での申告を忘れていたり、Google広告の広告費を消費税の控除対象としているケースもみられました。

というもの、ネット広告については、日本国内の代理店経由で取り扱いがされることも多く、「直接Googleに支払い」をしたり日本国内の代理店が「立て替え払い」としていた場合には「消費税は上乗せ請求されず消費税控除対象外」、日本国内の代理店からの「広告枠の購入」となる場合には「消費税は上乗せ請求されるが消費税控除対象」という違いがあり経理処理を誤ることがあるのです。

なぜクレジットカード決済手数料やGoogleAdWordsは消費税が掛かったり掛からなかったりするのか?

中には、間違っていても税務署も気づかずそのままということもあるのではないかと。

そう思わざるを得ないくらい「現場の税務署員もリスティング広告などの仕組みをよくわかっていない」と感じることが多々あるのですが、今回の改正によりその取り扱いについて3月以前の分も含めて注視してくることが予想されます。

ですから、このGoogle広告をはじめとしたYahooやfacebook、twitterなどのネット広告の消費税の経理処理についてはきちんとチェックをしてくことをおすすめいたします。

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