税務署が狙う決算書の足跡|それ、税務調査を呼んでいるようなものです

税務調査は通常7-10年に一度だが

近年では税務調査の頻度は落ちてきており、中小企業では7-10年に一度程度で来ることが多いです。

しかし、「なぜ今ここに来た」というような短いスパンで来ることもあり、必ずしも税務調査の頻度についてルール化できるものでもないのですが、「こういうことがされたときには税務調査に来やすい」という法則が、長年の経験から感じ取れるものもあります。

そこで、今回は、私が個人的に感じる「税務調査のきっかけになりやすい決算書」について、考えてみることにします。

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税務調査が来る確率の上がる決算書

税務署は、法定調書や資料せんなど外部のデータに照らした上で、決算書や事業概況書に次のような点が見られたときには、「修正すべき点があるのでは」という筋読みをしてくることが多いのではないでしょうか。

少なくとも私が税務調査官ならそうします。

役員借入金の増大

中小企業では、社長の役員報酬など仮払金のようなものであり、会社に資金が足りなくなれば、すぐに社長は自分のお金を会社に入れなくてはなりません。

この社長が会社に入れた資金は、会社から見れば、社長から借りたお金のなので「役員借入金」となります。

そのこと自体は、なにも悪いことではないのです。

しかし、役員報酬がそれほど高くもないのにそれよりも遥かに大きな役員借入金の増加があったとするとそのお金を社長はどこから持ってきたのか、脱税した資金なのではないかという筋読みをします。

なぜなら、仮に売上の除外をした場合、仕入れ代金などの支払いは必要になるものの会社にお金が足りなくなるので、社長が会社にお金を入れることが多くなり役員借入金が膨らむからです。

銀行が、役員貸付金について、自分が貸したお金がどこかに流出しているのではないか、本当は経費にすべきなのに領収証を”握りつぶして”経費を減らした粉飾ではないかと懸念するのに対し、税務署は、役員借入金について、脱税した売上金が会社に還流してきたのではないかと疑惑の目を向けるものなのです。

不動産の取得

脱税されたお金は、地下水脈のように簿外の預金などでプールされていますが、そのお金が使いみちを求めて一気に表に噴出するときがあります。それが、不動産の取得です。

その不動産取得のお金はどこから調達されたものなのか、実は、帳簿に表れていない売上金を原資にしているのではないかという筋読みがされるので、不動産取得が税務調査のきっかけとされることが多いのです。

特に、その不動産取得の原資が、銀行借入金ではなく、役員借入金が増えていると、一体どこからこのお金が出てきたのよと疑いの目が強まることになるわけです。

売上高が減少、粗利益率の大きな変化

売上高が急激に伸びたり減ったりした場合には、税務調査に来る確率はその分高くなります。

特に売上高が減少していたり、粗利益率が急激に低下している場合には、「前期は調整が間に合わず、泣く泣く税金は支払ったものも、それに懲りて当期はハナから売上高を除外しているのではないか。そのため、粗利益率も落ちているのではないか」という筋読みをしてきます。

大抵は、売上不振だから、値引きをしてでもなんとか利益を確保しようとした結果なのですが、中には、売上除外をしていることがあるので、売上高が大きく減少して全体の利益が落ちているときにも税務調査がよく来るのです。

ですから「赤字に転落したうちになんで税務調査に来るのよ。」と思うかもしれませんが、実際に赤字でも税務調査は来ます。

それに、仮に法人税は取れなくても、消費税や社長個人に対する経済的利益の供与として源泉所得税は赤字の会社でも追徴課税できることもありますから。

特別損失の計上

役員退職金の支給や前期損益修正損、固定資産の除却などは損益計算書上、特別損失とされます。

これらの金額が多額に計上されている場合、それが税務上の損金算入要件を満たしていないときには、一気に多額の追徴課税ができます。

ですから、多額の特別損失が計上されるというのも、税務調査の引き金になりやすいといえます。

還付請求

前期が黒字で法人税を納税しており、当期に赤字に転落した場合には、前期の黒字と当期の赤字を通算して、前期に納税した法人税の全部または一部について還付される「欠損金の繰り戻し還付」という制度が中小企業には認められています。

また、消費税については、売上などに伴い預かった消費税額よりも仕入れや固定資産取得等の支出にともない支払った消費税額の金額のほうが大きい場合、消費税額の還付がされます。

これらの還付請求をする場合、税務署としてもその申告内容を精査して還付をする必要があるので、税務調査に来る確率が大きく上がるのです。

そう思わせて、できるだけ「欠損金の繰戻還付請求」をさせないようにしようとしているとも思えなくもないですが。

いつか来る税務調査だしこちらでコントロールはできない

そうはいっても、税務調査はいつか来るものだし、なにをどうやってもこちらで税務調査が来ないようにとコントロールできるようなものでもないです。

まともな決算申告をしていれば、いくら税務署が脱税を疑ったところで、税務調査なんて単なる公務員のルーティンワークなので、それほど心配にするようなものでもないでしょう。

間違っていれば、元々そのときに払わなくてはならなかった税金にちょっとペナルティを上乗せして払うだけのことですからね。それも、単なる時点のズレで翌期以降でその税金を取り戻せるものも多いのですから。

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