オーナーの役員報酬額を決める上で考えなくてはいけない5つのこと

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税負担が最少=最適な役員報酬額なのか?

「オーナーの役員報酬額をいくらにしたら良いのか」というのは、税理士に対する質問の中で、最も多いものの一つだと思います。

私の答えは「社長のお好きにどうぞ」というものです。

なんだか、テキトーなようですが、これが正しいことだと思っています。

まずは、社長がいくら役員報酬を欲しいのか=会社と個人とどちらでどれだけお金を残したいのかを決めてもらい、それが税金などのコストなどからみて「納得ができるものなのか」を検討して頂く。

少なくとも、シミュレーション上、税金が最も安い役員報酬額が「最適な役員報酬額」であるというようなことはないと思います。

そこで今回はオーナーの役員報酬額を決定する上で納得ができるものかどうかを判断するために考えるべき5つのことについて見ていくことにします。

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法人税と所得税

役員報酬額を増やせば法人の利益は減り、役員報酬額を減らせば法人の利益は増えます。

一方で税金についは、役員報酬に対する所得税等は最小15%から最大50%までの累進課税であるのに対し、法人の利益に対する法人税等は約38%の一律(中小法人の課税所得800万円までの部分は約23%)での課税です。

また、役員報酬については、支給された給与から給与所得控除といういわば概算の経費を差し引くことも出来ます。

これらの課税の仕組みの違いから、役員報酬に対する所得税と法人の利益に対する法人税等の合計額が最少となる役員報酬額というものが計算できます。

社会保険料

役員報酬額が増えると、その分、社会保険料の負担が増加します。

従業員同様、社会保険料の負担は会社と個人で折半ではありますが、オーナー=会社であれば、結局、個人負担分も会社負担分も両方オーナーが負担するようなものです。

厚生年金保険料については、多くの金額を負担した分だけ将来もらえる年金額も増えるので、その支払い=無駄なコストというわけではありませんが、不透明な年金行政をみるとできればその負担は小さくしたいと思う人も多いでしょう。

その場合、上記の税負担を最少にする役員報酬を検証する際には、この社会保険料の負担額も加味した上で計算をする必要があります。

役員退職金

退職金と言うのは、長年の功労に応えるものであるということから、給与などよりも税負担が大幅に軽減されています。

オーナーとしては、できるだけ多くの退職金をもらうことで、その税負担軽減の恩恵をより多く受けることができます。

しかし、法人税法では、「一定金額」以上の退職金については「過大な役員退職金」として、仮に支給がされてもその金額については法人の所得計算上損金にならず、法人税が課税されてしまいます。

この「一定金額」は下記のように計算がされます。

適正な役員退職金額の上限=最終月額報酬✕勤続年数✕功績倍率

この算式から、できるだけ多くの役員退職金を法人の損金にしたいのであれば、できるだけ多くの役員報酬額を取っておくほうが良いことになります。

(役員報酬額自体が過大だとされると、その役員報酬額が損金にならないこともあります)

自社株評価

役員報酬額を少なくするということは、会社の利益が多くなるととも過去の利益の蓄積である純資産額も大きくなることになります。

自社株式の評価額の算定上、会社の利益額と純資産額は重要な指標の一つなのです。

そのため、役員報酬額を低くする=会社の利益が多くなるということは、自社株の評価額を引き上げることになります。

自分の会社の株式の評価額が上がるということは良いことのようにも思えますが、事業承継をするために親から後継者に株式を贈与する場合には、その贈与対象額と贈与税額が増えるということにもなるのです。

(役員報酬額を高くすると、その分個人にお金が残るため、万一相続が発生した場合には、相続税額が増加することもあります)

資金調達

オーナー社長にとって見れば、会社に残したお金と個人に残したお金は預金通帳の名義の違いしかないと思う方も多いでしょう。

しかし、資金調達をする場合には、そうではありません。

役員報酬としてもらい、所得税等を支払った残りは個人のお金として残ります。

このお金は、個人的に自由に使うことは出来ます。

もし、会社の事業でお金が必要になった時には、一旦会社にお金を貸し付けて利用することも可能です。

この場合、会社の決算書上、これらの金額は「役員借入金」となります。

これは借金といっても、会社から見れば「ある時払いの催促なし」の借金です。

そのため、もし、会社の純資産だけでは融資をするには財務状態がよくないという判断がされる場合には、この役員借入金は「純資産に準じるもの」として金融機関は救済的な判断をします。

つまり、個人で残したお金は、個人としても、会社としてもどちらでも自由に利用ができるということです。

一方で、会社の利益から法人税が差し引かれた金額は、会社にお金が残ります。

会社に残したお金は、会社の事業では自由に利用ができます。

では、個人的に使いたい場合はどうでしょうか?

役員報酬額を超えて引き出された金額は、会社の決算書上「役員貸付金」となります。

この金額は、資金調達上かなりマイナスな勘定科目です。と言うのは、金融機関は、お金を貸す際には、「返してもらえるのか」というのと同じくらい「何に使うのか」ということを重視して融資の審査をします。

その際に「オーナーに貸すため」という理由で、融資の申込はしていないはず。

つまり、役員貸付金が計上されているというのは、目的外に融資資金を利用したことになります。

また、役員貸付金を認めてしまうと、いくらその会社の決算書を審査したとしても

勝手に他者に貸付をして、そこで融資審査ものとは違う事業を行う事もできてしまいます。

くわえて、オーナーに対する貸付金ということは、万一会社が倒産した場合には、オーナーも一蓮托生なため、その貸付金も焦げ付く可能性が高い。

要するに、財産的な価値がないに等しい資産だと言えます。

そのため、役員貸付金が決算書上に残っていると、その発生原因と解消方法について金融機関から説明を求められます。

たしかに、会社の利益が多く、純資産の額が大きいということは収益性や安全性の評価上は有利ではありますが、役員貸付金の存在自体、資金調達上は好ましいものではないのです。

つまり、会社に残したお金は、会社では自由には使えるが、個人で使うのには制約がある。

個人で残したお金と会社で残したお金ではその「使い道の自由度」に違いがあることを忘れてはならないのです。

実は、社会保険料の負担まで考慮をすると、税負担等を最少にする役員報酬額と言うのは極端に小さくなり、場合によっては月額10万円などと計算されることもあります。

つまり、会社と個人の税負担等を最少にしたいというのであれば、会社にお金を残したほうが有利な場合が多いと言えます。

今後法人税率は引き下げられる一方、所得税等と社会保険料の負担は増加することが見込まれるので、この傾向はより高まるでしょう。

しかし、こんな少額の役員報酬では、オーナーの生活費を賄うことは出来ません。

結果的にオーナーが生活費として引き出したお金と役員報酬額との差額についてドンドン役員貸付金が膨らんでいきます。

これでは、決算書が歪んでしまいます。

融資の条件に、この「役員貸付金の解消」を持ちだされた時に、役員報酬額を僅少にしていたら、個人の口座にはお金がありません。

個人のお金がない以上、役員報酬額を引き上げて役員貸付金を解消することになりますが、そこで多額の所得税等が課税されます。

節税になると思って役員報酬額を僅少にしてみたところ結果的に税負担は変わらなかった、あるいはかえって多くなってしまったなどということもあるので注意が必要なのです。

シミュレーションはあくまでも自分の判断が正しいかを確認するための目安

最初に申し上げましたが、私は役員報酬の金額は、税務上認められないような法外なものでない限り、社長が会社と個人でどのようにお金を残したいかという考えを最優先して良いと思います。

ただ、その判断をする上で、自分の判断が正しいものなのか確認がしたいでしょう。

そこで、最少の税負担額と自分が希望する役員報酬額の税負担額を比較をする。

その上で、その差額が自分の希望を満たす上で納得のいく「追加負担」なのか、あるいは自分が許容できる「追加負担」ではどこまで役員報酬額を取ることが出来るのかのシミュレーションであるはずだと考えています。

そもそも、法人と個人では12月決算以外、その課税対象となる期間にはズレがあるのです。

どんなに精緻なシミュレーションをしたとしても、税負担が最少になるものこそが最適な役員報酬額であるというのようなシミューレーションであれば、それは決して正しい会社の数字の使い方だとはいえないでしょう。

会社の数字は、その本当の目的に照らして利用する必要があるのです。

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