消費税増税後の中間申告はややこしい|予定納税額は前期×1/2ではありません

前期の納税額が一定金額超であれば中間申告が必要

法人税等と同様、消費税についても前期の納税額が一定金額を超える場合、一定期間ごとに前払いとも言うべき中間申告と納税が必要になります。

このときに、一定期間を課税期間とみなして消費税額を計算する「仮決算」による納税も認められますが、多くの場合、前期の納税額をベースに中間申告の納付額を計算する「予定納税」が採用されます。

では、この予定納税額は、消費税増税によりどうなるのか?

そこで、今回は、消費税増税により予定納税額にどのような影響を与えるのかについてまとめてみることにします。

消費税の中間申告

消費税については、前期の年税額が以下の金額の場合、それぞれの回数の中間申告が必要となります。

消費税及び地方消費税の税率|タックスアンサー

なお、この中間申告の必要性の判定に用いられる金額は国税分である「消費税額」であり、地方税分である「地方消費税額」は含まれないので注意が必要です。

では、なぜ、中間申告の判定は、前期の年税額のうち国税分が「48万円」などという中途半端な金額になったのでしょう?

それは、消費税3%の頃は国税しかなく「前期の納税額が60万円超」を基準にしていたものが、消費税率5%の頃の「国税(4%)と地方税(1%)合わせて60万円超」となり、そこから逆算をして「国税分48万円」とされた。

しかし、消費税8%になり国税分が6.3%になったことに伴い金額を変えようにもそれこそ中途半端な数字になるので、そのまま「国税分48万円」を残したということ。

そして、消費税率10%になってもこのまま「国税分48万円」が消費税の中間申告が必要なのかの判断基準となるわけです。

予定納税額の計算は前期×1/2から微妙にずれることも

前期の国税分の消費税額が48万円超400万円以下であれば、原則半期(6ヶ月)を基準に消費税の予定納税額が計算されます。

前期が12ヶ月であれば、当期の予定納税額は「前期の消費税の年税額×1/2」となるはずなのですが、どうも計算が合わない時がある。

その理由はなにか。

ひと言でいえば、端数処理の順番に注意が必要だからということです。

消費税率が10%になった場合の予定納税額の計算は次のルールで計算がされます。

<国税分>

当期の予定納税額=前期の消費税額(国税分)×中間申告の月数/前期の月数

<地方税分>

当期の予定納税額=当期の国税分予定納税額×(22/78)

地方税分の「×22/78」というのは、消費税率10%のうち7.8%が国税分、2.2%が地方税分であるため、7.8%分として算出された国税分の予定納税額から比率で逆算をして地方税分を算出しているということ。

これが消費税率が8%のときには、6.3%が国税分、1.7%が地方税分なので「×17/63」を掛けていたわけです。

消費税及び地方消費税の税率|タックスアンサー

さて、国税分について(×中間申告の月数/前期の月数)ならば、通常は6/12であり、結局1/2をかければよいかのように思えます。

しかし、なぜか消費税の予定納税額については、まずは前期の国税分の年税額を前期の月数で割り、1円未満を切り捨てた上で、中間申告の対象期間の月数を掛けることになっています。

そのため、単純に前期の国税分の年税額に1/2をした金額とは微妙にズレが生じることもある。

その国税分の予定納税額をベースにして地方税分の予定納税額も計算されるので、こちらも単純に前期の予定納税額を1/2した金額とは微妙にズレることもあるということなのです。

予定申告の金額が「前期の年税額の半分」から微妙にズレる理由ー正しい予定申告額の計算方法

消費税増税の予定納税額への影響

では、課税期間が消費税の増税時期をまたぐ時の予定納税額はどうなるのでしょうか?

結論から言うと、当期において消費税の増税時期をまたぐ場合の予定納税額は従来どおりです。

例えば、2020年3月決算の予定納税は消費税増税後の11月になされますが、その予定納税額は前期の計算式と同じです。

影響が出てくるのは、消費税増税後に開始する課税期間、つまり2019年10月1日以降開始の課税期間の予定納税額です。

では、消費税増税後に開始する課税期間の予定納税額はどのようになるのでしょう。

まず、中間申告の必要性については、「前期の国税分の消費税の年税額が48万円超」ということは変わらないです。

また、国税分の予定納税額の計算方法も変更はありません。

しかし、地方税分の予定納税額については、税率変更で国税分との比率が変わるので、8%の時の17/63ではなく、10%では22/78に変わります。

そのため、地方税分の予定納税額は、前期の予定納税額×1/2よりもほんの少し多くなるということです。

なんて面倒くさいんでしょう。決算時にお客様に予定納税額の内訳をお聞きしても、たいてい予定納税の申告書はどこかにいってしまってわからないのでこっちで計算せねばならんのですよ。うちは申告書が届くよりも早く決算終わらせてしまうので。

(お願い|消費税の予定申告書はうちにPDFで送っておいてください)

それにしても、計算式は税務署が決めたものだし、納付書も合計額で記載させておきながら、なぜ、我々が国税分と地方税分を分けて申告をする必要があるのでしょう。

国と地方の分け方なんざこっちには関係ないのだから、そっちで勝手にやってほしいものです。

合計額は一緒なのに、国税分と地方税分に100円ずつ違いがあるだけで、「申告書出し直せ」とか全く意味がわからんですよ。

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