賃貸と持ち家どっちが得か?|住宅ローン控除、3000万円控除以外の隠れた持ち家の税制上のメリット

持ち家とは自分が店子の不動産投資である

「持ち家が得なのか賃貸は得なのか」というのは、資産運用では常に議論がされているテーマです。

私の考えは、持ち家というのは、「自分が店子の不動産賃貸」であり、どっちが得であったのかは、不動産の市況で決まる結果論であるとしか言いようがないというものです。

基本的には、借り手と貸し手の利害は対立するので、経済的にバランスの取れたところで家賃は均衡するはず。

ですが、税制的に、持ち家が有利になっているものもあります。例えば、「住宅ローン控除」や「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」などです。

今回は、もう一つ「持ち家の隠れた税制上のメリット」について、考えてみることにします。

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賃貸は価格変動リスクを回避し、居住地変更のオプションを得る

「持ち家は、賃貸にはない、固定資産税や修繕費など維持費の負担が必要である」と言われますが、不動産オーナーは、それらのコストに自身の利益を上乗せした上で家賃を決定しているはずです。

なので、結果的に賃貸であっても、形を変えて不動産の維持費を負担していることになります。

持ち家と賃貸の大きな違いは、不動産価格変動のリスクを取るかどうか、さらに居住地変更の選択肢を得られるかどうかということでしょう。

持ち家であれば、その後、不動産市況が変動するというブレ幅を受け入れなくてはなりません。賃貸であれば、いつでも解約することができるため、その不動産価格変動リスク(ブレ幅)を回避することができます。

同時に、ライフスタイルに合わせて、居住地や間取りを選択できます。

資産運用では、より高いリスクを受け入れることでより多くのリターンが得られ、選択肢(オプション)を得るにはコストを負担しなくてはなりません。

つまり、持ち家を自分が店子の不動産投資と考えると、持ち家が不動産価格変動リスクを受け入れること、賃貸がそれを回避する選択肢を得る分だけ、賃貸のほうが持ち家よりもトータルの負担は大きくなるはずです。

そうでなければ、わざわざリスクを取って不動産を買う人は、誰もいなくなってしまいます。

持ち家についての税制上の優遇措置

このリスクとオプションを含めたところで、家賃相場が形成されるので、経済的に考えれば、賃貸と持ち家の損得は均衡し、あとは、不動産市況次第ということ。

これは、「株式をこれから買うのが得か、買わないのが得か」と言うの同じです。

しかし、国が景気促進策として、持ち家について、いくつかの税制上の優遇措置を取っています。

例えば、「住宅ローン控除」

これは、自宅を取得するのに要した住宅ローンの年末残高に一定割合を掛けた金額だけ所得税、住民税の負担を軽減する措置です。

住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|タックスアンサー

もう一つ、「居住用不動産譲渡所得3,000万円控除」というものがあります。

これは、不動産を譲渡した場合、その値上がり益については譲渡所得として税負担が必要なところ、一定の居住用不動産については、その譲渡所得から3,000万円を控除することができるという優遇制度です。

マイホームを売ったときの特例|タックスアンサー

持ち家を「自分が店子の不動産投資」と考えると、取得から保有、そして譲渡するまでのトータルでの収支で、賃貸との損得を考える必要があります。

持ち家であれば、所有しているだけで所得税・住民税の控除がされたり、譲渡について課税が軽減されているということは、その分だけ賃貸よりも有利に傾いているといえるでしょう。

*不動産譲渡の損失については、他の所得と通算されず切り捨てられるだけ不利ですが、居住用の不動産で一定の要件を満たす場合には、他の所得との通算が認められることもあります。

住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|タックスアンサー

家賃を支払わなくてもよかった利益については非課税

持ち家と賃貸を比較する場合、もう一つ隠れた税制上の優遇措置があります。

それは、家賃を支払わなくても良かったことによる利益への課税です。

持ち家とは、店子である自分から家賃をもらっているということです。この家賃を経済学的には「帰属家賃」といいます。

しかし、その自分からもらった家賃については課税がされていません。

「そんなのは、当たり前だ」と思われるかもしれませんが、持ち家を第三者に賃貸した時と比べてみましょう。

持ち家を賃貸することで家賃をもらえます。しかし、持ち家を賃貸してしまうと、自分が住むところがなくなってしまいます。

そこで、全く同じ家に同額の家賃を支払って住むことにします。これで「家に住む」という効用は、持ち家に住むのと同じことになります。

では、持ち家を第三者に賃貸したときの課税関係はどうなるのか。

もらった家賃は不動産所得となり、所得税が課税されるはずです。支払った家賃は、賃貸の時と同様、どこからも税金の計算上控除されません

(建物の減価償却費は控除が可能であるが、その分、譲渡時に「減価の額」として取得費から差し引かれ、譲渡所得を大きくします)

経済的な効用は同じなのに、持ち家に住んでいるのであれば、この「帰属家賃」については、課税がなされないとなれば、その分税制上有利であることになります。

帰属家賃(≒相場賃料)が月額10万円として年額120万円。10年持ち家に居住した後で譲渡したとすれば、持ち家を資産運用して自分は同じ家を賃貸した時と比べて1,200万円に課税がないということです。

自宅取得を不動産投資としてみれば、賃貸よりも持ち家がやや有利に働く部分といえるでしょう。

課税の公平の見地から「帰属家賃についても課税すべき」という議論もありますが、実際に課税するという話が出てきたら、持ち家信仰の強い日本では暴動が起きそうですね。

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