法人税などの申告期限を延長するには?
本来の申告期限は事業年度終了の日から2ヶ月以内
法人は、事業年度終了の日から2ヶ月以内に、その期間の課税所得について確定申告をし、そこから計算された税額の納付を行う必要があります。
しかし、特例として一定の要件を満たす法人は、その申告期限を延期することができるのです。
そこで、今回は、法人の申告期限延長手続きについて、まとめてみることにします。
申告期限の延長ができる場合
以下のいずれかの要件を満たす場合には、法人の申告期限を延期することができます。
1.定款等又は特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から2月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあるため、申告書の提出期限を1月間(連結事業年度にあっては2月間)延長しようとする場合。
2.会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3月以内(連結事業年度にあっては4月以内)にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあるため、4月を超えない範囲内で申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合。
3.特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3月以内(連結事業年度にあっては4月以内)にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあること、その他やむを得ない事情があるため、申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合。
4.連結子法人が多数に上ること、その他これに類する理由により連結所得の金額又は連結欠損金額及び法人税の額の計算を了することができないことにより、今後、各連結事業年度終了の日の翌日から2月以内に法人税の連結確定申告書を提出できない常況にあるため、申告書の提出期限を2月間延長しようとする場合。
5.特別の事情があることにより、今後、各連結事業年度終了の日の翌日から4月以内に連結所得の金額又は連結欠損金額及び法人税の額の計算を了することができない常況にあること、その他やむを得ない事情があるため、申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合。
なんとも難しいことが書いてありますが、中小企業については、決算が確定する定時総会が申告期限を過ぎて開催される場合、決算で確定した利益をベースに税額を計算する法人の申告期限も延長することができるということです。
その理由として用いられるのが、上記の「会計監査人による監査」や「定款の定め」などです。
会社法では、定時総会の実施時期は、事業年度終了の日から3ヶ月以内と定められています。
もし、その会社の定時総会が事業年度終了から2ヶ月以上を経過してから開催される場合には、それまで決算による利益が確定しないため、法人の申告の期限も延長せざるを得ないという理屈です。
では、その定時総会の時期はどこに定められているのか?
それが「定款」という会社設立時に定められた事業運営の基本的なルール集のようなものに記載がされています。
ですから、その定款に、定時総会の開催時期が事業年度終了の日から2ヶ月以内と定められている場合には、法人の申告期限延長も認められません。
もし、定款で定時総会の開催時期が「2ヶ月以内」と定められていた場合には、「3ヶ月以内」に変更をしましょう。そうすれば、申告期限を事業年度終了の日から3ヶ月以内に延長することも可能になります。
こうして、一定期日までに申告期限延長の届出をすれば、一般的な中小企業であっても、法人の申告期限を事業年度終了の2ヶ月以内から3ヶ月以内に延長できるのです。
なお、この申告期限が延期されることの効果としては、2ヶ月間以内に申告が間に合わなかったとしても、
・無申告加算税がされない
・繰り返し期限後申告をすることで青色申告承認が取り消されるのを回避する
ということが可能になります。
申告期限延長の手続き
申告期限の延長は、法人税だけでなく、法人の事業税や都道府県民税、市民税などの地方税でも可能です。
しかし、消費税については申告期限の延長は認められていませんでした。
それが、令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から、消費税についても1ヶ月間の申告期限延長が認められるようになったのです。
なお、法人税のみの申告期限延長は認められますが、消費税のみの申告期限延長は認められません。消費税の申告期限延長をする場合には、必ず法人税の申告期限延長の手続きが必要です。
法人税のみ申告期限を延長し、消費税の申告期限は2ヶ月以内のときには、かえって面倒な修正が必要であったためにこの改正がされたのですから、消費税の申告期限延長も認められるようになった後で、あえて法人税のみの申告期限延長をするケースはまずなくなるのではないでしょうか。
この申告期限の延長は、特例の適用を受けようとする事業年度終了の日(消費税は終了の日の属する課税期間の末日)までに「申告期限延長届出書」を税務署や地方税の所管の機関にそれぞれ提出をする必要があります。
一度提出をすれば、翌事業年度以降も申告期限の延長は適用されます。
この申告期限延長届出書の提出の際には、定款のコピーを添付することが求められます。
しかし、定款というのは、設立時に作成したままであまり使用されることがないため、紛失していたり探しても見当たらないことが多いもの。
そのような場合には、「株主総会の開催時期」について定款変更を決議した株主総会議事録を作成し、それを税務署等に提出することになるのです。
申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書|東京都
納付期限が延長されないので見込み納付を
上記の申告期限延長の届出書を提出することで「申告期限の延長」は可能です。
しかし、「納付の期限」が延長されるわけではありません。
つまり、本来の納付期限から遅れて納付がされた場合には、延滞していた期間に応じた利子税(延滞税ではない)という税金を支払わなくてはなりません。
この利子税の負担を回避するには、とりあえず「このくらいの税金にはなるはずだ」という概算の税額を計算しておき、その金額を納付期限までに「見込み納付」をしておくのです。
このときの利子税は、正しい納付額ー見込み納付額が対象となりますので、実務上はやや多めの金額を見込み納付しておくことで利子税の負担を避けるということが可能になります。
新型コロナで申告期限も納付期限も伸びる
通常は、申告期限の延長には、原則として延長をしたい事業年度終了の日までに届け出をする必要がある上、納付期限については延長はされません。
しかし、今年については、新型コロナウィルスの影響で期限までに申告書の提出のできないこともあるでしょう。
たとえば、役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したケースだけでなく、次のような方々がいることにより通常の業務体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども考えられます。
・体調不良により外出を控えている方がいること
・平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
・感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
・感染拡大防止のため外出を控えている方がいること
さらに、上記のような理由以外であっても、感染症の影響を受けて期限までに申告が困難な場合には、個別に申告期限延長が認められます。
この新型コロナウィルスの影響による「申告期限の延長に関する個別の申請」は、申請書等を作成して提出する必要はありません。
申告書の提出の際に、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を申告書の余白に付記するか、e-Taxの「電子申告及び申請・届出による添付書類送付書」の「電子申告及び申請届出名」欄にその旨を入力するだけでよいのです。
そして、この「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」がされた場合には、納付期限についても、その申告書の提出期限まで延長がされます。
ですから、上記の文言を記載した申告書の提出の前に、納税を済ませておくことで、延滞税の負担なしに申告期限の延長も申告期限の延長も可能になるのです。
しかし、これは、あくまでも新型コロナウィルスという特殊事情があってのことです。
コロナ禍が収束すれば、元の申告期限延長のルールに戻ります。
来年以降も申告期限の延長をするのであれば、申告期限延長届出書を期日までに提出しておく必要があります。
金融機関への決算報告などを考えれば、特段の理由もなくむやみに申告期限を延長することが良いとは言えませんが、どうしても作業量が多く、決算が確定するのが遅れがちの会社については、期限切れで無申告となるペナルティを回避するために、念のため申告期限延長届出書を提出しておくという手もあるでしょう。
まあ、そういう会社は、いくら申告期限が延長されても、結局期限ギリギリに申告がされがちなんですけどね。
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