会社の数字とお金に強くなるための最初の一歩|何から学ぶのが最短ルートなのか?
社長は数字に弱い?
社長と話していてよく聞く言葉に「自分は数字に弱い」というものがあります。
中には、理系出身の技術者や医師など、どう考えても私よりは数学的な素養のある人まで、金銭的な判断の元となる数字には弱いと考えている人もいるようです。
そのため、「どうにかして会社の数字に強くなりたい。どこから勉強すればよいのか」というご質問をいただくことも。
ただ、実際には、我ら職業会計人が扱う数字というのは、ほぼ「足し算・引き算・掛け算・割り算」という小学生でもわかる「算数」なんですよ。
なので、難しすぎて理解が出来ないということは絶対ない。要するに嫌いだから避けているというのが真実なのでしょう。
そこで、今回は、社長が会社の数字に強くなるためには、どこから学べばよいのかという話をしてみようと思います。
社長には簿記は要らない?決算書が読めればいい?
会社の数字について語る上で、必ずテーマになるのが「簿記は必要なのか」という話です。
巷には税理士や公認会計士と言った職業会計人の書いた「社長には簿記など要らない、決算書が読めればいいのだ」という本が溢れています。
かくいう私も何冊も決算書の読み方についての本を書いてきました。その中で、おかげさまでディスカヴァー・トゥエンティワン社から出させてもらった「会社の数字に強くなる!」という本は発行部数が約38万部にもなっています。
それだけ多くの方が会社の数字に強くなりたいと思っているのでしょう。
では、お聞きしますが「決算書ってなんのために読むんですか?」
「株式投資に役立てる?」
いや、決算書の内容だけで株価が動くわけでもなく、そもそも株価なんて誰にも予想は出来ないのでは?
「ライバル企業の研究したい?」
いや、未上場の企業の決算書なんて一体どこで入手できるんです?
そもそも、他人の決算書なんて読んで意義のある機会なんてそんなにないんですよ。
「いや、そうじゃない。自分の会社の決算書を分析して悪いところを改善したいのだ」
確かに大事なことですが、「何をどうしたら業績がよくなるのか」が決算書をみてわかるのですかね?
もし、業績が良くするには何が必要なのかを理解したいのであれば、絶対に学ぶべきものがあります。
それが、簿記の原理です。
簿記の原理がわかれば、「何をどうしたら決算書に良いインパクトを与えられるのか?」を理解することができます。
「決算書を読む」というと、やれ「流動比率が高いから安全性も高い」などという指標の分析について語られますが、それよりも、あなた自身の意思決定や行動が決算書にどんな影響を与えるのかを読み解くため、まずは「簿記の原理」を学ぶほうが、真の意味で決算書を読み解けるようになる近道です。
事実、「簿記は要らない」と言っている職業会計人は100%簿記は知っているし、その経済活動が業績にどんな影響を与えるのかはこの簿記のロジックで判断をしているはずですから。
プロは本気で簿記は要らないなどとは誰も考えていない。そう言わないと売れないからそう言っているだけなのです。
簿記のロジックは節税の正しい理解の基礎
さて、この簿記の原理を理解することで、「やるべき節税・やるべきではない節税」を見分けることができるようにもなります。
やるべき節税とは一言で言えば、「その意思決定をすることでやらなかったときよりも将来の現金が増えるもの」といえます。
ですから、今目の前のお金だけではなく、将来に渡ってのお金をトータルで見る必要がある。税金についても、目の前の税負担軽減だけではなく、お金が帰ってきたときの税金負担増も考慮しなくてはなりません。
この時の原則は「お金を出したときに損金になったものはお金が戻ってきたときに益金になり、お金を出したときに損金にならなかったものはお金が戻ってきたときには益金にはならない」ということ。
つまり、「支出時全額損金」という魅力的なキーワードも、実はトータルの税負担は変わらず節税効果などないということです。
これを何度説明しても「支出時に全額損金になって一年で100万円税金の支払いが減れば、10年で1000万円お金が残る」と考える社長があまりにも多い。
これは、簿記の基礎すら理解していないということです。
どこにも「支出もないのに損金だけが生まれる」ような「タダ飯」などないということが簿記の原理を学ぶことで理解できることでしょう。
それなのに、高いコストを掛けて、節税以外の目的もなく全額損金算入される節税商品を探すというのは、苦労して稼いだお金をドブに捨てているのと同じなのです。
社長は簿記初級だけでいいから学ぼう
では、どうすれば簿記をカンタンに学べるのでしょうか?
一番いいのは簿記検定の教科書で学び実際に検定に合格をすることです。
これだけ体系的に学べるように設計されたものはないですから。
しかし、近年、簿記検定2級であってもそれまでは1級の範囲とされていた「税効果会計」や「連結会計」もその範囲とされるなど簿記検定の難易度は大きく上がってきています。
それに、従来「この程度は学んでほしい」と思っていた簿記3級の範囲にも、実務上ほぼ使われていない帳簿転記など、社長が簿記の原理を学ぶにはムダな事項も多いのは事実です。
そこで、おすすめしたいのは、簿記初級という検定です。
その範囲の中でも特に知っておくべきは、「簿記の基本原理」のところだけですが、一つ一つの経済取引がどうつながり、自社の決算に反映されるのかを知るためには、「期中取引の処理」、「月次の集計」についても学んでおくこともムダではないはずです。
少なくともこの簿記初級を学んでおくことで、あなたも自身の行動が決算書にどんな影響を与えるのかを即座に理解できる様になるとともに、意味のない節税商品のセールスに違和感を覚えることができるようことでしょう。
地味だけどこんなに役に立つ簿記の原理は、会社の数字やお金を理解する上でのOSになる部分なのです。
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