取り壊した建物の簿価と解体費用は支出時損金に算入できるとは限らない

旧建物の取り壊し費用の損金算入時期

建物を新築する場合には、その敷地に旧建物があれば、まずはその旧建物を取り壊す必要があります。

では、その取り壊し費用はそのように経理処理がされるのでしょうか。

当然、取り壊した旧建物の価値がなくなるので、その簿価は除却損となり、取り壊しにかかった費用は支出時に損金になる。

そう考えるのですが、実は必ずしもそうではありません。そこで、今回は、旧建物を取壊した時の費用の経理処理についてまとめてみようと思います。

(1)旧建物を取り壊して更地として利用する

旧建物を取り壊す目的が、その敷地を駐車場や資材置き場など更地として利用をする、あるいは更地にして譲渡をするには、原則として、その旧建物の簿価については固定資産除却損として、取り壊した時点で損金に算入されます。

また、取り壊しに要した工事費用等についても、工事完了時点で損金算入されます。

(2)旧建物を取り壊して新建物に建て替える

旧建物を取り壊す目的が、新しい建物に建て替えるためである場合には、原則として、旧建物の簿価については固定資産除却損として、その取り壊しをした時点で損金に算入されます。

また、取り壊しに要した工事費用等についても、工事完了時点で損金算入されます。

取り壊した建物等の帳簿価額の損金算入|タックスアンサー

土地とともに取得した建物を取り壊した場合

しかし、注意が必要な場合があります。それは、土地とともに取得をした旧建物を取り壊して建て直しをする場合です。

この土地と一緒に取得をした旧建物を取得後間もなく取り壊すというのは、取得の時点から、その旧建物は邪魔なものとして更地とすることが前提になっていたと考えられます。

要するに、その旧建物の取り壊しは、新建物建築のための敷地の整備作業にほかならないということです。

そうなると、盛り土等と同様、それらは土地の価値を高めるためのものであるとして、旧建物の簿価とその取り壊しのための工事費については、その時点では損金にならず、土地の取得価額に含められることとなります。

では、土地と一緒に取得した旧建物をどのくらいの期間で取り壊した場合には、当初から更地にする前提であったと考えられるのか。

法人が建物の敷地を建物とともに取得した場合で、その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手するなど、初めからその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合には、このような取り扱いがされます。

ですが、これは、あくまでも初めから更地で利用することが明らかである場合ですから、初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由が生じたことにより、その使用をあきらめなければならないような場合には、その取得後おおむね1年以内にその建物を取り壊したときであっても、その建物の簿価と取壊費用の合計額は、土地の取得価額に含めないで、取り壊したときの損金の額に算入することができるのです。

土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額|タックスアンサー

除却損と取り壊し費用が即時損金されない上に、土地の取得価額となるのであれば、減価償却もできず、その資金の回収=利益から控除されるのは、その土地を売ったときまでできないということであり、とても厄介ですね。

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