税務調査で修正申告書を提出するメリットってなに?|私が修正申告書を出す時・出さない時

税務調査で修正事項を指摘されると

税務調査の結果、税法の取扱いについて誤りがある部分があれば、税務署から修正申告をしてほしい旨の打診があります。

では、修正申告書を提出しないとどうなるのか?

今回は、納税者にとって税務調査で修正申告書を提出する意味について考えてみます。

スポンサードリンク

申告内容の誤りを正すのは修正か更正

税務調査の結果、税法に照らして申告内容に誤りがある部分については、修正申告をするか更正をされるかのどちらかがされます。

修正申告とは、申告した税額が過小であることが判明した場合に、納税者が自ら正しいと思われる金額に修正をした申告書を提出することです。

一方、更正とは、税務署が納税者から提出された申告内容の誤りを正しいと思わる税務処理に訂正することです。

国税通則法では、それぞれ次のように定められています。

国税通則法第十九条
(修正申告)
納税申告書を提出した者(その相続人その他当該提出した者の財産に属する権利義務を包括して承継した者(法人が分割をした場合にあつては、第七条の二第四項(信託に係る国税の納付義務の承継)の規定により当該分割をした法人の国税を納める義務を承継した法人に限る。)を含む。
以下第二十三条第一項及び第二項(更正の請求)において同じ。)は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その申告について第二十四条(更正)の規定による更正があるまでは、その申告に係る課税標準等(第二条第六号イからハまで(定義)に掲げる事項をいう。以下同じ。)又は税額等(同号ニからヘまでに掲げる事項をいう。以下同じ。)を修正する納税申告書を税務署長に提出することができる。
 国税通則法第二十四条
 (更正)
税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。
 この文言をみると、修正申告は、納税者が「できる」という権利であり、更正は、税務署が「しなくてはならない」義務であることがわかります。

では、修正申告と更正ではどんな法的効果の違いがあるでしょうか?

修正申告をすると、以後、修正申告した内容に異議があっても事実上不服申立てをすることができなくなります。(過少申告加算税、重加算税については可能です)

一方、更正をされたとしても、その内容に異議があれば、不服申立てをすることは可能です。

いわば、修正申告書は、納税者の”自白調書”のようなものだと言って良いでしょう。

更正をする場合、税務署としては、後日納税者から異議を申し立てられても反証できるように、丁寧にその”裏付け”をとる必要がある上に、署内の承認の手続きも手間がかかるため、税務署としてはなんとしても修正申告をしてほしいと考えています。

そのため、結果として税務調査で修正すべきと指摘された場合の多くは、納税者側から修正申告をすることで調査終了となっているのです。

なぜ修正申告をするのか?

その後、修正した内容について不服申し立てのできない修正申告書をわざわざ手間を掛けて提出するのはなぜでしょうか?

その理由は、大きく分けると次の2つが考えられます。

(1)なんらかの譲歩が提示された

税務調査で誤りだと指摘された事項のすべてについて修正申告をしているわけではありません。

白とも黒とも言えるようなグレーゾーンについて、折り合いのつく金額までの損金算入を認めるということや、指摘事項のうちいくつかは「今回は指導に止めておき修正は求めない」などという落とし所を探すような交渉が税理士と税務署の間で行われます。

その結果、税務署から何らかの譲歩が提示されたのであれば、その代わりに修正申告をするということです。

(2)サッサと税務調査を終わらせたい

税務調査は、納税者にとっては心理的にプレッシャーの強い出来事です。

できれば、早く終わらせたいと多くの人は考えています。

特にまだ指摘はされていないが、あまり触れられたくないことを抱えている場合には、「今指摘されていることを修正するだけで済むなら」ということで、修正申告に応じるのです。

修正と更正のペナルティの違い

では、修正申告ではなく、更正がされた場合には、過少申告加算税や延滞税などのペナルティについて、どんな違いがあるのでしょうか?

実は、その違いはありません。*

修正すべき事項がミスや見解の相違によるものであれば過少申告加算税が、仮装隠蔽によるものは重加算税が課税されますが、修正申告をしても更正をしてもその額に影響はないのです。

*法人税の更正がされてから1ヶ月以内に「法人事業税の修正申告」をすることで、事業税についての追徴税額の10%である過少申告加算金が免除されます。

「見解の相違・ミス」と「仮装隠蔽」でこれだけ違う。過少申告加算税・無申告加算税・重加算税と延滞税

つまり、修正申告は、なんらかの譲歩を引き出すか、サッサと税務調査を終わらせるためにするものであり、別に早く税務調査を終える必要もなければ、税務署に言われたとおりに修正申告をするメリットはないことになります。

なので、明らかにこちらのミスであり、議論の余地もないのであれば、わざわざ修正申告をする必要もなく、税務署に更正をしてもらえば良いのです。

税務署が『修正申告をお願いする』なら、『こちらのお願いも聞いてくれない限り』は。

当然、税務署はなんとか修正申告をしてもらおうと、必死に税理士を説得します。

税務署「修正申告をしてください」

税理士「いや、間違いは認めるけど修正申告するメリットないからそっちで更正して」

税務署「間違っているのに直さないとはどういうことですか?あなたの仕事はなんなんです!」

なんてことを言われても

「そりゃ、税理士の仕事は、お客様の利益を守ることで、別に税務署に言われたとおりに修正申告することじゃないですよ。」

というだけです。

税務署員にこんなこと言われたら、絶対に修正申告書なんて出すわけ無いです。そんなに人間ができていないので。

更正されたところで、払う税金は一緒なんですから。

脱税したわけでもなく、間違いは認めて税金は払うと言ってるんですから、税務署もそれ以上何も言えません。

と、いつもこんな感じで、結果的に更正になることはチョイチョイありますが、だからといって、その後うちのお客様に集中的に税務調査が入ったこともなく、更正を受けたお客様に頻繁に税務調査が来るようなこともないです。

世の中、こんなへそ曲がりで面倒くさい税理士ばかりではないのでしょうが、最近は弁護士で税理士業務を行う人も増えてきてます。

あの人達が義務でもなく何もメリットもなければ、わざわざ不利になる修正申告などするとはとても思えません。

税務署も大変だろうなあと思いますね。

セミナー音源No.13:どこまでならOK?税務のさじ加減

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を