【長編】なぜ夜中まで働いてもカネが残らないのか:その12

第二章 金銭的に有利なビジネスと不利なビジネスはあるのか
1、運命の出会い
「あー、もう。人使いが粗いと言ったらないわ。」
「就業時間ギリギリにこんな仕事を頼んで。
今日はコンサートだって知っているはずなのに。」
やっと仕事を終えコンサートに行くため駅の階段を駆け上がりながら、
理恵は独り言をつぶやいた。
「全く、何が留守番みたいなものよ。
一日中びっちりスケジュールが管理されているじゃない。」
留学資金を稼ぐため父親の顧問税理士のところでバイトをはじめたものの、
あまりに聞いていた条件との違いに、
何時やめるかだけを考えていた。
「この電車に乗らないと完全に遅刻だわ。」
息を整えながら、ホームを見てみると、
ちょうど電車がホームに入るところだ。
「何とか間に合いそうだわ」
理恵は時計を見ながらほっとしたのだ。
その時すっと、背中から追い越しホームの
白線を越えた男が理恵の視界に入ってきた。
「危ない!」

スポンサードリンク



とっさに、その男の腕をつかんだ理恵は
仕事のイライラをぶつけるかのように大声で叫んだ。
「いったい何をやっているのよ。
あんた、もう少しで飛び込むところじゃない!」
「いや、いっそそれでも良かった。もう何も失うものもないし。」
男は、うつろな目でつぶやいた。
「あーもう、電車に乗り遅れちゃったじゃないの。」
そんな男の態度にイライラを募らせながらも、
なぜか理恵はその男を放っておくことが出来なかった。
一人ではどうして良いかわからない。
理恵はその男を自分のボスの所まで連れて行ったのだ。
「なんだよ、いそがしいのに。ノックぐらいしてもいいだろう。」
勢いよく事務所のドアを開けた理恵に
パソコンの画面を見ながらボスはつぶやいた。
自称「行列のできる会計事務所。
一人で専任担当制として直接顧客に対応する異色のコンサルタント。」
そういえばかっこいいが単に偏屈で組織のマネジメントができないだけ。
それが、理恵のボスだ。
「どうせ、暇つぶしでネットでも見ているだけでしょう。」
「それより、ちょっとだけ相談に乗ってあげてくださいよ。」
パソコンからほんの一瞬目をそらしただけの
ボスは面倒くさそうにつぶやいた。
「とても、人に物を頼む態度じゃないが、誰だ?
この顔色の悪い若造は。」
「なんだか、独立して売上は順調なはずなのに、
お金が足りず途方にくれていたみたいです。
私が助けなければ鉄道自殺になっていたかもしれないんですよ、この人!」
余程コンサートに行けなかったのが悔しかったのだろう、
理恵はいつも以上に強い口調でこの男を叱責した。
それを聞いた拓海はさらにうなだれるだけだった。
「とりあえず時間がもったいないんだよね。手短に話してよ。」
そんなぞんざいなボスの態度にもかかわらず、
自分の話を聞いてくれる人がいた喜びだろうか。
堰を切ったように拓海は、
今までの独立の経緯と自分に融資をしなかった
銀行の悪口を語り始めた。
もう5分もしたあたりだろうか。
いつものようにボスは明らかに興味のない顔で聞いている。
「全くこれだけ感情が顔に出てよくサービス業がやれるわよね。」
理恵は心の中でつぶやいた。
やっと拓海の話が終わったころ、ボスは窓の外を見ながら一言つぶやいた。
「銀行は別に悪くないだろう。」
「え?だって、ちゃんとネットショップでも売れ始めているし、
大口の取引先だってほぼ決まりそうなのに。
それで貸してくれないなんておかしいじゃないですか?」
困ったやつだなといわんばかりにボスは拓海に語りかけた。
「じゃあ、あんたは見ず知らずの若造がいきなりやってきて
数パーセントの金利で金をかすかね。」
「そ、それは」
「もう一つ聞くが独立した人間のどれくらいが
10年後も生き残っていると思う?」
「およそ2割だ。
それに開業一年で全体の4割が廃業しているんだ。
そんなリスクのある人達にあんただって、
たった数パーセントの金利で金なんて貸さないだろう。」
拓海は押し黙ってボスの話をきいていた。
★ポイント 金を貸さなかった銀行を批判する前に、
自分のビジネスモデルを再検証しなくてはいけない。
【編集後記】最近Youtubeで話題なのが、「勝手広告」
広告主に断りもなく、自らが有名企業のオリジナルCMを
作ってYoutubeで流すものです。
詳しくはこちら
中には、本家の広告を上回るほどのクオリティの
ものまであります。
これだったら、腕に自信アリのクリエーター志望者も
ドンドン自分でCMを作ってYoutubeにアップできる。
ひょっとしたら、その作品を見た広告主が
「うちのCMを作ってくれ」という依頼をしてくるなんてことも。
先日の某セミナーでの、
「いまから○○の○○○○○を映像化しておけ」
という言葉の意味がわかったような。

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を

【長編】なぜ夜中まで働いてもカネが残らないのか:その12” に対して4件のコメントがあります。

  1. 《緑の葉》 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんばんは[絵文字:v-280]
    吉澤先生は、マジ小説の才能もありますね~、お上手。
    特に女性のセリフ[絵文字:v-420]
    『手ガネ経営』『はじめての独立・起業・・・』を熟読し、実践していれば
    拓海も失敗せずに済んだのに[絵文字:e-263]
    後記:
    おほほほほっ  虫よけ
    「勝手広告」紹介、ありがとうございました。
    面白いCM楽しませて頂き、感謝[絵文字:v-436]

  2. ヨシザワ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >><<緑の葉>>さん
    テキストから映像への流れは
    止まらないでしょう。
    映像は、その分作るのに
    手間がかかるんですけどね。

  3. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ボ、ボス。。。カッコイイ♪

  4. ヨシザワ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >>貴夫さん
    ボスの横柄さだけは、実写版[絵文字:e-263]

コメントは受け付けていません。