消費税導入時からの改正の歴史を振り返ることで見えてくる消費税の未来

消費税法の今後を占うために歴史を振り返る

2019年10月より消費税の税率は10%になり、軽減税率が導入され、2023年10月からインボイス制度導入が控えています。

消費税が導入されたのは1989年4月、それから30年以上の間には税率以外にも多くの改正がされてきました。

では、今後消費税法はどのような形になっていくのか。

それを予想するため、消費税導入から30数年間の改正の歴史を振り返っていくことにします。

税率

消費税の税率は以下のように改正がされています

時期 間隔 消費税の税率
1989.4 3%
1997.4 7年 5%(国税4%地方税1%)
2014.4 7年 8%(国税6.3%地方税1.7%)
2019.10 5年半 10%(国税7.8%地方税2.2%)軽減税率8%

 

消費税の税率は当初から上げられることが予定され、タイミングを見ながら税率アップされていることが伺えます。

免税事業者の判定

基準期間(原則として課税期間の前前期)の課税売上高が次の金額以下の事業者については消費税の納税義務がない「免税事業者」となります。

時期 免税事業者となる課税売上高
1989.4 3,000万円以下
1997.4 1,000万円以下

 

なお、

  • 1999年4月以降「資本金が1000万円以上の新設法人」については設立当初から
  • 2013年12月決算以降の法人については「前事業年度上半期の課税売上高(または給与支払額)が1000万円を超える事業者」は翌期から
  • 2014年4月以降設立の法人については「課税売上高5億円超の事業者が設立する新設法人」であれば設立当初から

免税事業者制度は不適用とされるという、大手企業の「免税狙い」を封じ込める改正がなされています。

ここから、導入を円滑にするために設定された小規模事業者に対する免税事業者制度は、その対象範囲が狭められてきたことが伺えます。

限界控除

基準期間の課税売上高が免税対象金額を超えたても一気に消費税の負担が増加せず、緩やかに税負担が増えるよう課税売上高が増えるに従い控除額の逓減する「限界控除制度」という中小企業優遇措置がありました。

この限界控除制度の上限適用金額は次のような改正を経て廃止されています。

時期 限界控除適用上限額
1989.4 6,000万円
1991.10 5,000万円
1997.4 廃止

 

当初の小規模事業者への負担軽減はやりすぎとの判断で早期に縮小廃止されたということでしょう。

簡易課税の上限金額とみなし仕入率

簡易課税を選択すると、仕入税額控除についてはわざわざ課税仕入れに係る消費税額を集計することなく、課税売上高に業種ごとに定めた「みなし仕入率」を掛けた金額とすることができます。

この簡易課税制度については、適用ができる基準期間の課税売上高の上限金額と業種ごとに定められたみなし仕入率がそれぞれ次のように改正されてきています。

適用上限金額

時期 適用上限金額
1989.4 5億円
1991.10 4億円
1997.4 2億円
2004.4 5,000万円

 

みなし仕入率

時期 第一種 第二種 第三種 第四種 第五種 第六種
1989.4 90% 80%
1991.4 90% 80% 70% 60%
1997.4 90% 80% 70% 60% 50%
2014.4 90% 80% 70% 60% 50% 40%

 

業種区分 主な業種
第一種事業 卸売業
第二種事業 小売業
第三種事業 製造業、建設業
第四種事業 飲食業などその他の事業
第五種事業 サービス業
第六種事業 不動産業

 

ここからは、簡易課税の選択ができる範囲は縮小され、みなし仕入率も業種ごとの実情に合わせながら小さくなっていることが伺えます。

仕入税額控除方式

消費税は消費者が負担するものであり、商品やサービスを消費するたびに国に納付をすればよいのですが、それが困難であるため、事業者が消費者から消費税を売上代金と一緒に受け取り一定期間まとめて国に納付をします。

このような仕組みを「間接税」といいます。

商品やサービスは、事業者から直接消費者に提供されるものばかりではなく、製造業者から卸売業者、小売業者など複数の事業者をへて消費者の手許に届くものも多いです。

それらの商品やサービスについて、それぞれの事業者が売上に伴い受け取った消費税を納付してしまうと、一つの商品やサービスに何重にも消費税が課されてしまうことになります。

そこで、事業者が納付する消費税額は、売上に伴い受け取った消費税額から仕入に伴い支払った消費税額を控除(仕入税額控除)することにしました。

これで、一つの商品やサービスに重複して消費税が課されることはなくなるのです。

この仕入税額控除の目的は「消費税の重複した納税を排除する」ため、ですから、仕入れた相手が消費税の納税義務のない免税事業者や消費者の場合にも控除をすると過大に控除をすることになってしまいます。

しかし、その判定のためには、仕入先が消費税の納税をしているのかどうかの判定が必要になり、強い反対の中、消費税を導入するためには、その問題があることを承知の上で、相手が誰かは判定せずに仕入税額控除を認めるという妥協をしました。

具体的には、消費税の仕入税額控除には、請求書や領収証の保存も求めず、必要事項を帳簿に記載すればよいという「帳簿保存方式」という方法が選択されたのです。

その後、消費税率が上がり、過大な控除の結果、消費者の負担した消費税が国のもとへ納付されない「益税」の額が増大する中で、一定の請求書等の保存も求められる「請求書等保存方式」に改められました。

税率が一つしかない単一税率であれば、まあ、これでいいだろうと思われていたところに、飲食料品や新聞にだけ軽減税率が導入が決定されると、その税率を正しく判定できないと正しく納税額が計算できないことになります。

じゃあ、軽減税率を適正に運用するためには、ちゃんと税率、税額が記載された請求書等がなければならないよね。ということで、2016年税制改正により、軽減税率とセットで、消費税の仕入税額控除には、その税率や税額をきちんと記載した書類(インボイス)を必要とする「インボイス制度」導入が決定されたのです。

軽減税率導入をいやいや飲まされた財務省としては、これを機会に仕入税額控除の本来の理念である「消費税の重複した納税を排除する」という趣旨を実現しようと考えました。

消費税の仕入税額控除に必要なインボイスの発行は、登録した適格請求書発行事業者しかできないものとし、その登録には、消費税の納税をする課税事業者のみしかできないとしたのです。

つまり、「インボイス制度」になると、相手が消費者や免税事業者などインボイス(適格請求書)を発行することができない者からの課税仕入については、仕入税額控除ができなくなります。

結果的に免税事業者は売上について消費税を上乗せした請求が難しくなり、大きな負担を生じますが、仕入税額控除の趣旨からすれば、インボイス制度は消費税導入時に導入すべきであったものを、導入しやすさを優先した結果、今まで益税という問題があることを承知で目をつぶっていたところ、税率も上がりいよいよ限界に来たということだといえます。

なお、インボイス制度への変更は、今まで必要のなかった「誰に支払ったのか」という判定が必要になることなど大きな変更であるため、インボイス制度導入までの橋渡しとして、現在の請求書等に「軽減税率が適用される場合には、軽減税率が適用される旨と対象額」を追加すれば良い「区分記載請求書等保存方式」が採用されています。

消費税の中小企業者に対する特例措置の推移|財務省

消費税は当初のゆるゆる大盤振る舞いから徐々に規制強化

このように消費税導入からの改正の流れを振り返ってみると、強い反対を押し切って導入をするため、当初は必要以上にゆるゆるの大盤振る舞いで結果的に事業者の手許に消費者から受け取った消費税が残る「益税山盛り」だったんだなと。

税率が上がれば、益税の金額も大きくなる。そして、益税を野放しにしたままでは増税への理解もされない。ならば益税を封じ込めるための規制がより強化がされるというのは当然の流れでしょう。

その決定打が「インボイス制度」ということ。これで免税事業者による益税は完全に消滅するのです。

消費税改正の流れから今後を占うとすれば、消費税の税率は導入時から必要とされる税率に向かって段階的に上げられている。そしてその妨げとなる益税は排除していくということ。

事実、消費税は導入されて以降、減税や規制が緩和された例は見当たらないのです。

強いて上げれば導入当初は課税対象であった居住用の家賃が1991年10月に不動産業界の陳情で非課税になったということくらいかなと。

ただ、結果的にマンションの建築費の消費税が非課税売上に対応するものとして控除できなくなって自分たちで首を絞めることになったので、それが減税なのかは判断に迷うところです。

法人税や所得税よりも安定的に徴収ができ、このままだと最も多い税収になるであろう消費税について、今後減税や益税規制の緩和がされる可能性は低いとみるしかないでしょうね。

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